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デジモンタケヒカ二次小説
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cup ポッキーの日

2018.11.11 Sun

「ヒカリちゃん、何食べてるの?」

 放課後の教室、こっそり持ってきたおやつを食べてたらタケルくんに見つかった。
 ちょっとばつが悪くて、食べかけのポッキーを咥えたままタケルくんに箱を差し出す。

「今日、ポッキーの日でしょ? だから、食べたくなっちゃって。タケルくんも一本いる?」
「じゃあ、貰おうかな」

 ニコリと笑ってタケルくんが前の席に座る。
 差し出した箱からポッキーをとりだす振りをして、タケルくんはパクッと私が咥えていたポッキーの反対側に食いついた。

「えっ? 何してるの?」
「何って、ポッキーの日と言ったらこういうことでしょ?」

 いやいや。そんなルール聞いたの初めて。というか、顔が近い!
 物凄く恥ずかしいことしてるのに、タケルくんは顔色一つ変えず平然と見つめてくる。
 とっても近い距離で見てもタケルくんの青い目は相変わらず綺麗。瞳孔の向こうに自分の顔が映ってるのがわかって、思わず目をそらした。
 微かにタケルくんが笑った声が聞こえたすぐ後に、サクッと小さな咀嚼音が響く。

「先に口を離したほうが負けね」

 タケルくんに視線を戻すと、イタズラっぽく笑ってから、長いまつ毛を伏せて、お互いに咥えているポッキーを少しずつ齧りだす。

「ま、待って!」
「ん?」

 さっきよりももっと近くなった青い瞳に緊張する。

「負けたらどうなるの?」
「そうだなぁ。勝ったほうの言うことをなんでも一つ聞くってことで」
「タケルくんが勝ったら?」
「ヒカリちゃんの好きな人を教えてもらう」

 ポッキーを咥えたままニヤリと笑うタケルくん。そして先ほどと同じようにゆっくりとポッキーを食べ進める。
 まるでキスするみたいと思った瞬間、ぼっと顔が熱くなったのがわかった。

「待って、待って!」

 タケルくんの手を掴んで止まってほしいと訴えるけど、タケルくんは一度薄く目を開けただけでそのまま続ける。
 咥えたポッキーを離す訳にもいかず、なんども制服の袖を引っ張って、ようやくタケルくんは止まってくれた。

「どうしたの?」
「……タケルくん、食べるの早いよ」
「そっか。じゃあ僕はもう食べないから、ヒカリちゃんが食べ進めるのを待ってるね」

 語尾にハートマークでもついてそうな楽しそうな声。
 至近距離でのウィンクに、えぇっと抗議の声をあげると、タケル君はとっても楽しそうに机に肘をついて私を見つめた。

「ほらほら、頑張ってー」
「うー……」

 全く応援してる感じのしない声援に、覚悟を決めて目を閉じる。
 ドキドキを通り越してドクドクと鳴る心臓と、ポッキーを食べる度に耳に響く乾いた音がやけに大きい。
 なんで、私こんなに頑張ってるんだろ? さっさと負けを認めて好きな人を白状したほうが良かったかもしれない。
 今更後悔しても後にはひけない。
 何も考えるなと自分に言い聞かせながらひたすらにポッキーを食べていると、不意に唇に柔らかいものが当たった。

「え……」

 まさかと思って恐る恐る目を開けると、真っ赤な顔をしたタケルくんが顔を背けていた。

「……僕の負け」

 口元を隠してぶっきらぼうに伝えられる言葉。
 やっぱり、さっきのは……!
 唇に触れた柔らかさの正体を知って、一気に体温が上がる。

「ヒカリちゃん、なんでも一つお願い聞くよ」
「……じゃあ、タケルくんの好きな人を教えて」

 震える声で伝えたお願いにタケルくんは眉を下げて微笑み、私の唇はもう一度あの柔らかさを味わった。