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デジモンタケヒカ二次小説
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cup 秋桜

2018.11.03 Sat

 二学期が始まり、街を包む空気は急激に冷たくなってきた。
 澄み渡った青空が広がる今日みたいな日は、あんなに攻撃的だった夏の日差しが嘘のように、太陽は心地よく体を温めてくれる。
 今日がこんなにも気持ちのいい天気になったのは、お互いに日頃の行いが良いからだろうなと、浮かれた足取りで先をゆくヒカリちゃんを見つめた。

「タケルくん! 見て、満開!」

 コンクール用の写真を撮るためと、少し遠出して来た緑化公園。
 ヒカリちゃんが指差す先には満開のコスモス。白、オレンジ、濃淡の異なるピンク。美しい秋色の花畑だ。

「今日来て良かったぁ。きっと一番いい日に来れたね!」

 嬉しそうに一度振り返ってから、ヒカリちゃんは持参したカメラを覗き込んだ。
 パシャパシャと夢中でシャッターを切るヒカリちゃんの隣に静かに並び、その様子を眺める。
 目はイキイキと輝き、今日の美しい風景を切り取れる喜びからか、口元は嬉しそうにほころんでいる。
 秋の柔らかな光を浴びて輝く、一面のコスモスとヒカリちゃん。
 気づかれないよう、ポケットから携帯電話を取り出した。

 ――ピロン♪

「えっ? タケルくん、今写真撮った?」

 携帯電話独特のシャッター音に、ヒカリちゃんがさっと振り向く。

「うん。コスモス綺麗だから僕も写真撮ろうと思って」

 あくまでコスモスを撮っていたと主張して、ニッコリと笑顔を返すと、ヒカリちゃんは少し怪訝そうな顔をしたけど、すぐに気持ちを切り替えたようで再びカメラに視線を戻す。
 何を撮ったか誤魔化しきれたことに、ほっと胸を撫で下ろし、先ほど写したものを携帯電話に表示した。
 画面に映るのは、コスモスを嬉しそうに撮影するヒカリちゃんの横顔。この喜びに溢れた表情と比べたら、美しく咲くコスモス達も、ヒカリちゃんの引き立て役にしかならない。
 僕にとって一番美しい秋の風景が、決して消えてしまわないよう写真に鍵をかけ、その後は今日の美しさを瞼に焼き付けようと、撮影に夢中なヒカリちゃんをずっと見つめ続けた。
 少し冷たい空気に暖かな日差しが心地よく、僕はとても幸せだった。