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デジモンタケヒカ二次小説
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cup Insensitive boyfriend

2018.09.04 Tue

 お台場小学校に転校して二週間。ヒカリちゃんとも同じクラスになれて、楽しい学校生活が送れると思ってた。なのに、何故かヒカリちゃんを怒らせてしまい、理由を何度も聞いたら今度は嫌われてしまった……。
 重い足取りで帰路に着き、ため息をつきながら玄関のドアを開ける。家に入ってもう一度大きくため息をつくと、おかえりとお母さんの声が聞こえてきた。

「ただいま。こんな時間にいるなんて珍しいね」
「今日のアポ直前で飛んじゃったのよ。学校どうだった?」

 急に空いた予定にやることもなく、ワイドショーでも見てのんびりしてたんだろう。リビングの机の上にはコーヒーとお茶請けのクッキーが置かれている。
 ココアとプレーンで渦巻き模様になってるクッキーに手を伸ばし、一口で頬張りながら冷蔵庫を開ける。背を伸ばすために出来るだけ飲んでる牛乳をコップに注いで一気に飲み干し、ぷはっと息を吐いた。

「やだ。お父さんみたいなことしないでよ」
「別にいいじゃん。そういう気分のときもあるよ」

 オヤジ臭い仕草にお母さんが眉をしかめる。いつもなら素直にごめんって謝るところだけど、今日はそんな気分にはなれない。子供にだってやさぐれたい時はある。
 ため息をつきながら牛乳を冷蔵庫に戻すと、お母さんがコーヒー片手に僕に話しかけた。

「ヒカリちゃんと喧嘩でもした?」
「してない。喧嘩にもなってない」
「じゃあどうしたのよ。タケル、ヒカリちゃんと同じクラスになったって凄い喜んでたじゃない」

 親ってそういうところだけはしっかり覚えてるよね……。
 僕はヒカリちゃんと同じクラスになれて凄く嬉しかったけど、ヒカリちゃんはそうじゃないみたいで、喜んでくれてたのは最初の一日か二日だけ。日が経つにつれだんだんとヒカリちゃんが素っ気無くなり、態度も刺々しくなった。意を決して、何か怒らせるようなことをしてしまったのか聞いたら嫌われて……。
 ヒカリちゃんとこんなに険悪になるなら、転校なんてしなきゃ良かった。転校する前は、会うたびにいつも僕に可愛く笑いかけてくれてたのに。
さっきのヒカリちゃんの冷たい態度が思い起こされる。ヒカリちゃんは自分の胸に聞けって言うけど、全く心当たりが無い。
 何度目かわからないため息をつくと、お母さんがこちらを見てニヤニヤと笑っていた。

「ヒカリちゃんが嫌がることでもして怒られたんでしょ」

 どうして女親ってこう鋭いかな。こういうとき、お兄ちゃんになりたかったって思うよ。

「別に。何もしてない。心当たりも無い」

 ヒカリちゃんに嫌われたとは認めたくなくて虚勢を張りながら答えると、お母さんは相変わらずのニヤニヤ顔で話を続けた。

「あら、何もないならどうしてそんなにご機嫌斜めなのかしら?」

 楽しそうな声色が鼻につく。これ以上お母さんのおもちゃになる前にバスケの練習でもしにいこうと、リビングに放り投げていたランドセルに手を伸ばした。

「ヒカリちゃんと何があったのか教えてよ」
「だから何もないんだってば! 転校してからヒカリちゃんがどんどん刺々しくなって、今日はついに嫌われた。それだけ!」

 何度もしつこく聞いてくるお母さんに嫌気がさして、荒々しい語尾で答える。もう話は終わりと自分の部屋に向かおうとすると、お母さんは僕の苛立ちなんて意に介さずのんびりとした声をあげた。

「何もしてないのに嫌われたって変ねぇ。ヒカリちゃんは、理由無く人を嫌う子じゃないって思うけど」

 僕だってそう思うよ。だけど、いくら内省しても心当たりが見つからないんだ。

「タケル、本当に心当たりないの?何か知らないうちにヒカリちゃんの嫌がることしてない?」
「全く思い当たらない。ヒカリちゃんが嫌がることなんてしな…………あ、でも今日一緒に帰ろうって誘ったら別な子と帰ればって言われた」

 あのとき、なんでそんなこと言うのかわけが分からなかったけど、一緒に帰ろうって誘ったのが嫌だったんだろうか。
 転校初日は楽しく一緒に帰ったのになぁと首をひねる僕を、お母さんは目を丸くして見つめていた。

「それって、ヒカリちゃんヤキモチ焼いてるんじゃないの?」
「え?」
「タケルのことだから、クラスの女の子に誰彼かまわず愛想振りまいてるんじゃない?」

 そんなことは無い、とは言い切れないな。愛想を振りまいてるつもりはないけど、邪険にする理由も無いから、それなりに笑顔で対応している。それを愛想を振りまく行為と言われたら否定はできない。

「いや、でもそんなことでヤキモチ焼く?」

 やってることは前の学校にいたときと変わらない。前の学校のクラスメートと同じように対応してるだけ。そんなことでヒカリちゃんがヤキモチ焼くとは思えない。

「タケルは前の学校と同じようにしてるつもりかもしれないけど、ヒカリちゃんは前の学校にいたタケルを知らないのよ。タケルは愛想よくしてるだけでも、ヒカリちゃんの目には女の子に囲まれてデレデレしてるように映ってても不思議じゃないわ」

 お母さんはうんうんと自分の言葉に頷いてるけど、女の子に囲まれてデレデレなんて一度もしたことないからね。今日だって、輪から抜け出してヒカリちゃんを追いかける大変だったんだから。
 だから、ヤキモチなんて――――焼いてくれてるのか? あの子と一緒に帰ればって言われて意味がわからなかったけど、ヒカリちゃんは僕と話してたあの子に嫉妬してヤキモチ焼いてたってことなのか?

「ええっ!」

 唐突に理解したヒカリちゃんの言葉の意味に、顔面が熱くなる。

「初恋の女の子にヤキモチ焼いてもらえて良かったわね」

 お母さんは楽しそうに微笑み、コーヒーカップを傾けた。
 ――ヒカリちゃんが僕にヤキモチを焼いてるなんて、嬉しすぎてにわかには信じられない。だけどそう考えたら、ヒカリちゃんの不可解な言動に全て説明がつく。

「僕、ちょっと出掛けてくる」
「遅くなる前に帰るのよー」

 まだヒカリちゃんは怒ってて僕に会ってくれないかもしれない。だけど、今すぐに会って確かめたい。
 最近ずっと刺々しくて素っ気無かったのは、僕にヤキモチ焼いてたからなの? ヒカリちゃんに嫌われたと思ったけど、本当は僕のこと好きになってくれたの?
 会いたい。今すぐ会いたい。
 はやる気持ちに任せて、全速力でヒカリちゃんの家へと走る。身を切る風がどこまでも気持ち良かった。




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