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デジモンタケヒカ二次小説
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cup 吸血鬼タケヒカパロ

2018.08.14 Tue

 誰も来ない校舎裏、私達はいつもの密会を始める。


 学校の王子様、高石タケルくんの秘密を知ってしまったのは偶然だった。
 その日はコンクール用の写真を撮ろうと、たまたま屋上へと足を運んだ。日が沈む直前の黄昏時。誰もいない屋上で、昼と夜の境目を写真に収めようとカメラを構えた私の目に飛び込んだのは、コウモリから人へと形を変えながら空から舞い降りるタケルくんの姿だった。
 目の前で起こった出来事が信じられず呆然と立ち尽くす私に、タケルくんは慌てるでもなく悠然と近づいてきて、学校中の女の子を虜にする美しい笑顔を浮かべた。

「僕の秘密、見たね?」

 タケルくんは人間じゃない。秘密を知った者はきっと殺されるのだ。
 逃げようと思っても恐怖で足が竦んで逃げられない。生まれたばかりの子鹿のように足を震わせる私をタケルくんはいとも簡単に腕の中に閉じ込めた。

「秘密を知られてしまったら、その人の血しか飲めなくなる。それが吸血鬼の定め。僕はもうヒカリちゃんの血以外は飲めない」
「え……?」
「僕はもうヒカリちゃんがいなければ生きていけなくなった。責任とってね」

 はいともいいえとも答えられない私には構わず、タケルくんが首筋に唇をつける。
 ちゅっと音を立ててキスをしたあと、文字通り首筋に噛み付いた。
 突きつけられた牙は私に痛みを与えず、血を飲まれているはずなのに血の気が引くどころか、逆に身体の中に熱い何かが注がれているようで全身が火照る。タケルくんに血を吸われれば吸われるほど、身体の奥底が疼き思考がぼやけてくる。
 完全に頭の中が白くなる前に、タケルくんは私から離れ、口を拭った。

「甘いね。ヒカリちゃんはやっぱり最高だ」

 私の血がタケルくんの口にあったということだろうか。それは良かったとぼんやりした頭で考えてそのまま意識を失った。


 それから、タケルくんの正体を詳しく教えてもらった。
 タケルくんは千年を生きる吸血鬼で、伝説とは違い太陽もニンニクも十字架もちょっと苦手程度で日常生活を送る分には問題無いらしい。
 人間の血は積極的には飲まないけど、飲まなくては生命活動が維持できないらしく、今は献血で集められた血液の一部が吸血鬼用に回されてるとのこと。
 けれども、私がタケルくんの秘密を知ってしまったことで、もう私以外の血は飲めないのだそうだ。私が死ねばタケルくんも死ぬしかないらしい。
 偶然とはいえ悪いことをしてしまった。タケルくんは嫌だったら無理しなくていいって言ってくれるけど、私のせいでタケルくんが死ぬなんてそんなの絶対嫌だ。
 そうして、一日一回、人気のない場所でタケルくんと私の密会は始まった。


 今日もタケルくんが私の首筋に牙をたてる。タケルくんが喉を鳴らし私の血を飲めば飲むほど、身体が熱くなり意識が白くなる。
 タケルくんが教えてくれた秘密。吸血鬼は血を飲む代わりに、自身の体液を身体に注入するらしい。失われた血液の代わりになるように。それでも吸いすぎては身体に馴染まず血を吸われた人間が死んでしまうから加減が難しいと苦笑いしていた。
 身体が熱くなるのは、それが人間にとって媚薬効果があるから。人間が吸血鬼を必要とするためにそうなってるんじゃないかと言うけれど、多分タケルくんの言葉は正しい。経験なんて一度も無いからこれが本当に性的興奮なのかはわからないけど、タケルくんに血を飲まれれば飲まれるほどもっと飲んでほしいと願ってしまう。

「ごちそうさま。今日も美味しかったよ」

 汗ばみ、息も絶え絶えに力なく寄りかかる私をタケルくんが優しく抱きしめてくれる。他の人よりも一層白い胸板に頬を擦り寄せると、抱きしめる腕が力強くなるのがわかった。

「タケルくん、他の人にもこうやって血を飲んだことあるの?」

 ずっと聞きたかった。献血で集めた血を回すようになったのなんて最近のことだろう。それまでは一体どうしていたのか。
 私の知らない女の人の血を、私にするのと同じように飲んでいたのか。

「どうしてそんなこと聞くの?」
「どうしてって……」
「僕はもうヒカリちゃんの血しか飲めない。過去なんてどうでもいいじゃない」

 ズルい。自分ばかり秘密を抱えて、私には都合のいいところしか教えてくれない。私より遥かに長生きしてるタケルくんが過去に関わった女の人に嫉妬してるなんてバカバカしいとは思うけど、私の血だけしか飲めなくなる前のタケルくんも独占したいんだもん。

「それよりも疲れたでしょう? いつもどおり僕の腕の中で少し眠ったらいいよ」

 いまだ不服を抱える私の唇にタケルくんがキスをする。きっと何かの術で、キスをされるといつも瞼がすぐに重くなる。
 もっとタケルくんのこと教えてほしいのにと思いながら私は夢の世界へ旅立った。




「やっと眠ったね」

 ヒカリが眠ったのを確認して、タケルはほくそ笑みながらヒカリのブラウスのボタンを外し、ブラジャーの中に包まれた発展途上の膨らみにためらいなく齧り付いた。

「首筋からだとヒカリちゃんを味わいきれないんだよね。やっぱり心臓から直接が一番ヒカリちゃんを知れていい」

 血には多くの情報が含まれている。その人の健康状態のみならず、大体の感情まで読み取れる。

「だいぶ僕に夢中になったかな。過去の女に嫉妬までしてくれるようになった」

 ヒカリの血の味を確かめ、タケルは満足して微笑む。
 千年を超える時の中でタケルは初めて出会った。孤独を癒やし人生を満たしてくれる存在に。
 秘密を知られたらその人の血しか飲めないなんてヒカリの血を飲む口実として考えた真っ赤な嘘。確実にヒカリを手に入れるために、全ては最初から計画されていた。
 血を飲む際にも体液を注ぐ必要は無い。一方的に飲み捨てることだってできる。
 血を飲むと同時に体液を注ぐのは、一つはヒカリの身体の負担を減らすため。もう一つは性的興奮を覚えさせタケルに夢中にさせるためだ。
 清らかな乙女のヒカリを快楽に馴れさせるまで思ったよりも時間がかかったが、ようやく結果が出てきた。
 最初にヒカリの血を飲んだときにはただの友達としか伝わってこなかった感情が、今では特別な存在になりかけている。
 もう少しだ。もう少しで手に入れられる。
 吸血鬼に身体の中と外から同時に体液を注がれたとき、人間は吸血鬼になる。
 ヒカリが欲望を覚えタケルを求めたとき、ヒカリはやっとタケルのものになるのだ。

「むりやり吸血鬼にすることもできるけど、強引に進めて嫌われたら困るからね」

 これから共に悠久の時を過ごすのに、嫌われてしまっては意味がない。

「もっと僕を好きになって」

 タケルはもう一度ヒカリの胸に齧り付き、血を味わいながら自身の体液をたっぷりと注ぐ。

「んっ…………」

 ヒカリの頬が赤く染まり、寝苦しそうに唸る。

「僕に抱かれる夢を見ておやすみ」

 タケルはヒカリの髪を撫でながら、自分の口元についた血を舐め取った。




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