speranza

デジモンタケヒカ二次小説
<< 2018Jan. Feb. Mar. Apr. May Jun. Jul. Aug. Sep. Oct. Nov. Dec. 12345678910111213141516171819202122232425262728293031>>

Admin  |  New entry  |  Up load  |  All archives

Prev Entry | main | Next Entry |

cup Love is an Open Door

2018.05.11 Fri


「大きくなったらぼくのおよめさんになってください」
「…はい!」

にっこり笑う幼い彼女。
その姿はどんどん成長していき、綺麗になっていく。
そして、中学の制服を着たヒカリちゃんが僕に微笑む。
例えようもない幸福感に満たされて、彼女の手を取り口づける。
唇を離し彼女の表情を伺うと、綺麗な微笑みを絶やさないまま言葉を紡ぐ。

「私たちただの友達でしょ」


……そ、んなことっ!!!!!!!

自分の叫び声で目が覚めた。なんて目覚めの悪い朝だろう。
目覚まし時計に手を伸ばすとまだ五時前。
起きるには早すぎるけれど、もう一度寝る気にはなれない。夢の続きはもう見たくない。
のそのそとベッドから起き上がりカーテンを開けた。もう太陽は登りだしている。
窓を開けて朝の新鮮な空気を吸うと最悪の寝起きで最低な気分も少しはマシになる気がする。
朝の光を浴びながら、一度大きく伸びをした。

「…よしっ!」

こういう日は考えるよりも体を動かすに限る。
ランニングウェアに着替え、昨日も夜遅く帰宅した母を起こさないように家を出た。
軽くストレッチをして走り出す。行き先はもう決めている。
ランニングがリズムに乗れば、余計な考えや感情も消えて無心になる。
目的の場所に着くころには、いい感じに疲れて目覚めの悪さはすっかり消えていた。

着いたのはブランコと滑り台、そしてベンチがあるだけの小さな公園。
クールダウンにはまだ早いけれども、軽くストレッチをして、公園入口の柵に座る。
この位置からは、彼女の住む部屋が見える。
まだ寝ているだろうけれども、少しでも早く会いたかった。学校で会うまでなんて待てなかった。
ちょっとストーカーっぽいなと自分に呆れながら彼女の部屋を見ていると、パジャマ姿のヒカリちゃんがベランダに出てきた。
信じられなさ過ぎて、一瞬息がとまるかと思った。
この距離では表情までは伺い知れないが、朝の光を浴びた彼女はとても輝いて見える。
パジャマ姿もとても可愛いと見惚れていると、彼女は一度部屋へ戻り、すぐにまた出てきた。
そして、僕のポケットに入れていた携帯電話が着信を告げる。

「もしもし?」
「おはよう。やっぱりタケル君だった」

携帯電話から聞こえる大好きな可愛い声。
そして遠くて小さい彼女は僕に向かって手を振っている。
手を振り返して、彼女から見て落ち着いて見えるように格好つけて座りなおすが、顔は自然とにやける。
表情の見えない距離で本当に良かった。

「早いね。ランニング?」
「そう。早く起きちゃって。ヒカリちゃんはいつもこの時間に起きるの?」
「ううん。私も早く起きちゃって…いつもこの辺りを走ってるの?」
「気分によって違うかな。今日は少しでも早くヒカリちゃんに会いたかったから」
「ふふっ。タケル君は冗談が上手いよね」

冗談じゃなくて本気なんだけど。と思うけれども言えない。
僕はずっとヒカリちゃんが好きで、好意を素直に口にしているのに、ヒカリちゃんは全部冗談や軽口だと思っている。
僕の気持ちを知っていてはぐらかされているのか、本当に鈍いのか…
それを確かめたら関係がどう変わるのかが怖くて、僕ももう一歩が踏み込めない。
でも、このままではヒカリちゃんが僕の前から消えてしまうと心のどこかで思う。
あまりぐずぐずはしていられない。
息を一つ飲み、努めて明るい声で続けた。

「今日、朝練ないし一緒に登校しない?迎えに来るよ」
「いいの?タケル君の家からのほうが近いでしょ?」
「いいよ。今日はヒカリちゃんと一緒に行きたい気分なんだ」
「ふふっ。そんなこと言われたらタケル君のファンに恨まれちゃいそう」
「後で迎えに来るよ。まだ空気が冷たいから早く家に入って」
「わかった。また後でね」

手を振りあい、ヒカリちゃんが家に入ったのを確認して携帯を閉じた。
沸き上がる喜びが抑えきれず何度もガッツポーズをする。
一刻も早く家に帰って、シャワーを浴びて、早く彼女を迎えに来よう。
逸る気持ちそのままにオーバーペースで家まで走って帰った。




「おはよう」
「待たせちゃった?」
「ううん。僕も今着いたところだから」

マンションのエントランスでヒカリちゃんと落ち合い、そのまま取り留めのないことを話しながら並んで歩く。
たまに一緒には帰るけれども、一緒に登校するのはかなり久々で心が踊る。
隣を歩くヒカリちゃんは、いつもの見慣れた制服だけれどもやっぱり可愛い。
さっきはパジャマ姿だったんだよなぁと、先ほど遠目でみたパジャマを制服に重ねて想像し、いけない方向に走りだしたところで慌てて妄想をかき消した。

ヒカリちゃんと一緒に登校してきたからか、学校に着くと周囲がざわめきたつ。
すれ違う人すべての視線が逆に心地いい。
僕たちお似合いでしょう?と全員に自慢したくなる。
ヒカリちゃんも集まる視線をあまり気にしてはいないようだ。
僕と同じく、一緒にいることを周囲に見せびらかしたい気持ちがあるといいなと思う。
教室につくとクラスメイトに一斉に囲まれた。

「何?何??お前らやっぱり付き合ってるの?」
「一緒に登校なんて朝帰り?朝帰りっすか!?」
「本当はどこまでいってるんだよお前ら!!」

デリカシーのないやつらが煩く聞いてくる。
男子中学生ってこんなもんだろうけれど、ヒカリちゃんに下ネタを言うのは勘弁してほしい。

「朝、偶然会って一緒に登校しただけよ」

ヒカリちゃんが穏やかに答える。
偶然といっても登校のずっと前だけどね。と心の中で訂正する。

「そんな偶然あるか!やっぱり付き合ってるんだろ?」
「私とタケル君はそんなんじゃないってば」

しつこく食い下がる男子生徒に、ヒカリちゃんはあくまでも穏やかに、だけどきっぱりと否定する。
何度も聞かれすぎてヒカリちゃんは受け答えに慣れてしまっている。
あいつはヒカリちゃんが好きだからか、それでも僕とヒカリちゃんの関係を確かめたいらしい。
なら教えてあげようじゃないか。僕とヒカリちゃんは…

「結婚の約束はしてるけどね」

周囲の女子生徒から悲鳴のような甲高い歓声と、男子生徒のどよめきが広がる。

「もう、あれは小さいときのことじゃない」
「あはは、ゴメンゴメン」

ヒカリちゃんは呆れたように笑い自分の席に着く。
仕方なく冗談のように見せかけて、僕も笑いながら席に着く。
椅子に座った瞬間に沢山の女子生徒に囲まれ、口々に慰められる。
「タケル君元気だして~」「私が代わりに結婚してあげるよ~」
甘ったるい声色の数々の言葉に適当に返事をしていると始業のチャイムが鳴った。


さっきのやりとりのようなことを実はしょっちゅうしている。
おかげで、男子の中じゃ僕はヒカリちゃんに片思いしているけれども相手にされてないってことになってる。
女子の中ではなぜか、僕にとってヒカリちゃんは恋愛対象外だから軽口を叩いていることになっている。
どう思われても別にいいと思っていたけれども、予想外の方向になったのは否めない。
男子生徒に牽制しようとしても、お前相手にされてないんだろと効果がないし、女子生徒から告白されてヒカリちゃんが好きだからって答えても、嘘を言っていると思われる。
ヒカリちゃんにも気持ちが伝わっている手ごたえもないし、僕は自分の気持ちに正直なだけなのになぜか八方塞がりだ。

二人は付き合っているのかと聞かれて、最初に否定したのはヒカリちゃんだ。
僕は小さいときの結婚の約束をバカみたいに覚えていて、この関係はなんていうんだろう?フィアンセ?なんて考えているうちにヒカリちゃんが否定した。
そのときの僕は、多分あいまいに笑っていたように思う。
次にその話題が出たときに、小さい頃に結婚の約束をしていると周囲にアピールした。
彼女には小さいときの約束じゃないとはぐらかされた。僕は笑顔で冗談めかすことしかできなかった。
それから、なんどもこのやり取りを繰り返している。
ヒカリちゃんに直接、僕のことをどう思っているのかを聞けばいいのかもしれない。
けれども、彼女の口から否定の言葉を聞くのが怖くて何も聞けないでいる。
幼いときの結婚の約束は、僕の中の光だ。どんなに絶望が襲ってもその約束が僕を照らし続けてくれる。
彼女にあいまいに誤魔化されるのはまだ耐えられても、明確に否定されたらと思うと、僕の中の光が消えてしまうと思うと、何も出来なかった。




あっという間に授業が終わり放課後になった。
キュッキュッと体育館にシューズの音が響く。
いろいろな思いが渦巻くこういう日は、やっぱり無心に運動するのがいい。
周囲の歓声も聞こえないほど集中して練習に励んでいたが、ふと集中が途切れた瞬間、パスを大きく外して体育館の外にボールが飛んで行った。

「なにしてんだよ高石!!」
「ゴメン!今とってくる!」

ボールを取りに外にでると、遠くから話し声が聞こえてきた。
聞き覚えのあるような気がしてこっそりと近づく。
やっぱりヒカリちゃんと、そしてしつこく僕らの関係を聞いてきた男子生徒だった。
慌てて陰に隠れて会話を盗み聞く。

「なんで!なんでダメなんだよ!!」
「…ごめんなさい」

どうやら告白してフラれたらしい。
ヒカリちゃんが誰かのものにならなかった事実にひとまず安堵するが、相手はかなり食い下がっている。
しつこい奴だと割って入ろうかとしたそのとき、自分の名前が聞こえてきた。

「高石か?やっぱり高石と付き合ってるのか!?」
「ち、違うよ?」
「じゃあ、なんでだよ!高石のことなんとも思ってないなら俺と付き合えるだろ!!」
「い、嫌…」
「ふざけんな!!」
「キャッ!!」

「何してるんだ!!!!!」

考えるよりも先に体が動いた。
ヒカリちゃんの体を乱暴に壁に押し付け強引にキスを迫る男子生徒の腕をつかみ、逆にねじり上げる。
男子生徒をにらみつけると、そいつは舌打ちを一つ残して走り去っていった。

「タケル君…」
「大丈夫?」

途端、ヒカリちゃんは腰が抜けたように座り込んだ。
どうしたんだろうかと顔を覗き込むと、茫然と涙を流している。

気づいたら抱きしめていた。

抱きしめた後にヤバい自分汗臭いかもと思ったが、欲望と衝動には勝てなかった。
腕を彼女の背中と頭に回し強く抱きしめると、彼女の細い腕が僕の背中にまわり小さく嗚咽が聞こえてくる。
ヒカリちゃんが落ち着くまで、なんども背中を優しくさすった。
彼女特有の柔らかく甘いにおいがどこまでも心を締め付けて、愛おしかった。


「タケル君、ありがとう」

しばらくして、ヒカリちゃんがぽつりと言った。
名残惜しさに一度腕に力を込めて抱きしめてから、彼女を開放する。
ヒカリちゃんの顔を見ると頬を染めてはにかんでいた。
けれども目は赤くなり、まだ涙が滲んでいる。
親指で彼女のなみだを拭うと、閉じた瞼から一粒の涙が零れ落ちた。
そのまま指を頬に滑らせ顔を近づけようとしたとき、ヒカリちゃんの声が聞こえて慌てて手を離した。

「ごめんね、練習中だったのに」
「いいよ。問題ない」

実際本当に問題ない。
戻ってくるのが遅いからと心配して様子見に来たチームメイトが、僕とヒカリちゃんが抱き合っているのを見てそっと立ち去ったのを目の端で見ていた。
彼は察しのいいやつだから僕は早退だとかなんとか言って部活はなんとかしてくれているだろう。

「あんなにしつこいことよくある?」
「…たまに。でも、あそこまでは………」

よほどの恐怖だったのか、ヒカリちゃんは青ざめた顔をして身震いをする。
たまらず腕の中に引き寄せて抱きしめた。
ヒカリちゃんは反射的に離れようとするけれど、力を込めて離さない。
するとすぐに諦めて、僕の肩に顔を埋めた。
彼女は僕を必要としている。そのことが素直に嬉しい。

「…僕と付き合ってるって言えばよかったのに」
「…言えないよ。タケル君に迷惑がかかるもの」
「なんで?」
「なんでって…」
「僕はヒカリちゃんが好きだ。太一さん以上に守りたいと思ってる」

ヒカリちゃんの香りに酔ったのかもしれない。
いつの間にか言葉が口から出ていた。
僕の言葉にヒカリちゃんが腕の中で身じろぎする。
絶対に離さない。抱きしめる腕に気持ちを込める。
動けないのならせめてもの抵抗をとばかりに顔をあげて、ヒカリちゃんは僕を困ったように見つめる。
息がかかるほど顔が近い。
そのまま彼女の頭を自分に引き寄せて唇を重ねた。
唇を離すと何かを言おうとするので、言葉になる前にまた唇を重ねる。

唇を重ねた瞬間にわかった。君も僕が好きだって。
体面だけの拒絶の言葉なんていらない。もっと素直になって。もっと僕を求めて。

彼女の思考を奪うように何度も何度もキスをする。
僕の思考もどんどん奪われて、もう彼女の唇の甘さしか考えられない。
数え切れないほどのキスをして、より深く彼女を味わおうと息を吸ったタイミングで声が聞こえた。

「す、き……」

彼女の澄んだ瞳から涙が溢れ出る。
目元に唇をよせ涙を拭い、そのまま頬へと、顎へと移動し、最後に深く口づける。
抵抗は無かった。舌を入れて絡めるとおずおずと応えてくれる。
その事実に完全に思考が飛び、欲望のままに彼女を味わった。




どのくらいの間お互いを求めていたのだろう。
気がついたときには陽が傾き夕焼けが空を包んでいた。
指を絡めて手を繋ぎ隣り合って座る。
ヒカリちゃんは僕にぴったりとくっつき、時々猫のように頬を擦り付ける。
その一つ一つのしぐさが愛しくて堪らないが、同時に理性を繋ぎとめるのが大変だ。
名前を呼ぶと顔をあげて、可愛くキスをせがむ。
ちゅっと触れるだけのキスをすると、嬉しそうに笑い首筋に顔を埋めた。
そして僕の首筋に何度もキスを落としていく。
まって、まって!それはまずい!理性崩壊する!
慌てて引きはがすと、むうと頬を膨らます。
肩を抱き寄せ頭を撫でると、ヒカリちゃんは僕に体重を預けて目を閉じた。

「タケル君、ごめんね」
「何が!?」

まさかここまできてのお断り!?
最悪の答えがまず浮かび、余裕なく振り返った僕をヒカリちゃんは不思議そうに見つめる。
そういう訳ではなさそうだと、ほっとしてもう一度何に対して謝ったのかを聞くと、悲しげに目を伏せる。
今にも泣きだしそうな瞳に軽くキスをする。
なんどか繰り返しぎゅっと抱きしめると、ヒカリちゃんも抱きしめ返してくれる。
僕の背中にまわした腕に小さく力が込められたのがわかった。

「私ね、タケル君の言葉を信じるのが怖かったの。信じて、自分の闇に飲み込まれるのが怖かった」
「闇って…もしかして…」

真っ先に浮かんだのはあの暗い海。
彼女があの海に消えたとき、生きた心地がしなかった。
一度は僕が助けた。次に京さんがヒカリちゃんを助けたとき、よかったと思うと同時に自分の役割を取られた気がして、表には出さなかったが気に食わなかったのを覚えている。

「わからない。そうなのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない」

ヒカリちゃんの表情が暗く曇る。
手をヒカリちゃんの頬に添え顔をあげさせる。

「自分でなんとかできるようにならなきゃって思ってた…」

ヒカリちゃんの瞳から涙が溢れる。

「お兄ちゃんの代わりに、タケル君に甘えてしまうのが怖かった…!」

涙に濡れ不安に揺れる瞳にキスをして、そのまま唇に口づけた。
彼女の不安をすべて吸い出すように、何度も角度を変えて深く深くキスをする。
最後に彼女の舌を吸いながら唇を離すと、力が抜けたのかそのまま僕にもたれかかった。

「何度連れ去られても僕が必ず助ける」
「うん」
「ヒカリちゃんは僕の花嫁だ」
「うん」

突然ふっと今朝見た夢が頭をよぎった。
ヒカリちゃんの肩を持ち、彼女の体を起こして見つめあう。

「大きくなったら僕のお嫁さんになってください」

幼いときに勇気を出して彼女にしたプロポーズの言葉。
お互いの気持ちは分かっているのに、どこか緊張してしまう。
ヒカリちゃんは、何かにはじかれたかのように数度瞬き、そしてとびっきりの笑顔を浮かべた。

「…はい!!」

そのまま唇を重ねる。触れるだけ、だけど長く。
これは誓いのキス。
僕が一生、いや、生まれ変わっても必ず君を守るよ。





その後、明らかに雰囲気の変わった僕とヒカリちゃんの関係にいろいろな噂がたった。
そして、クラスメイトほぼ全員に囲まれて付き合ってるの?と聞かれる。
ヒカリちゃんはもう否定しない。笑顔を浮かべて明確な肯定をしないだけ。
だって仕方ない。僕たちの関係は付き合ってるとかそんな軽いものじゃない。

「僕たち付き合ってるとかじゃなくて、婚約してるから」

沢山の悲鳴が聞こえるけれども、それも全然気にならない。
「そうだね」ってヒカリちゃんがニコって笑うと、今度は男子の悲鳴が響いた。
やっとヒカリちゃんは僕のものだって理解してくれたみたいでよかったよ。

その後も、デートしてキスしてるのをみたとか、ホテルから出てくるのをみたとか、結婚式場にいたとか、嘘か真かわからない噂が多く飛び交ったけれど、一つだけ言えるのは、


僕とヒカリちゃんはお兄ちゃん達よりも先に大人になったってこと。