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デジモンタケヒカ二次小説
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cup ゲーム

2018.06.12 Tue

今日もいつものように放課後にタケル君の家に来た。
でも、今日の目的はいちゃいちゃすることじゃない。
っていうか、いつもも一緒にいたいだけでそんなことするつもりで来てるわけじゃないんだけど、ついタケル君に流されちゃって……じゃなくて!今日はタケル君が最新型のゲーム機を買ったと嬉しそうに教えてくれて、髭おじさんカートで一緒に遊ぼうと誘われて来たのだ。
髭おじさんカートは私にも簡単な操作できるから、タケル君の家でよく一緒に遊ぶ。
バナナ置いたり亀投げたり色んなアイテムを使って戦えて、私でもタケル君といい勝負になるから結構盛り上がるんだよね。
道すがら最新型のゲーム機がどう凄いのかタケル君が沢山話してくれたから、一緒に遊ぶのが凄く楽しみで仕方ない。
ワクワクしながらタケル君の家の玄関に足を踏み入れると、ドアが閉まるのと同時にドアに押し付けられキスをされた。

「んっ…今日は一緒にゲームするんじゃないの?」
「するよ?でも、その前に。一日中我慢してたから」
「もうっ!」

ちょっと怒った素振りをしつつも、本当は嫌じゃない。むしろ嬉しい。
だって私も、タケル君にずっと触れたかったから。
まつ毛が触れ合う距離で微笑み合いそのまま唇を重ねた。
日常で疲れた心をほぐすように少しずつ唇を啄みながらキスを深くする。
お互いの舌が触れ合い、想いを交換しながら絡み合っていく。
舌の根まで触れ合うほど深くキスをして、息も苦しくなってきたころタケル君は一度離れて妖しく微笑み、そして今度は肉食獣が獲物を貪るかのように激しく私の口内を荒らした。
息つく間も与えないそれに、頭の芯が痺れ体の力が抜けていく。
思考が奪われ、的確に私を攻め立てるタケル君の舌の動きしか考えられなくなる。
ようやくタケル君から解放されたときには、自分の力だけでは立てないほどすっかり骨抜きにされてしまった。
肩で息をする私を抱きしめタケル君が頬を寄せる。

「はぁ…はぁ……」
「ね、今日はゲームと僕どっちがいい?」

タケル君はずるい。
こうやって聞いてくるときは私がどっちを選んでもいいけれど、あわよくば私にタケル君が欲しいと言わせようとしているのだ。
それが男の人のさがなのかタケル君の性癖なのかは知らないけど、私にもっとねだってほしいらしい。
でも、その手には乗らない。だって今日はゲームをしに来たんだもん。

「ゲーム。今日はそのために来たんだから」

力の戻ってきた手でタケル君を押し離し、それが当然という態度できっぱりと告げると、ちっとも残念そうじゃない表情で残念と肩をすくめた。


今、ニュースでも話題になってる最新型のゲーム機はリモコンを持った手の動きで操作して遊ぶもので、慣れるまで何度もコースアウトしてしまったけれどもそれはそれで楽しくて二人で沢山笑い合った。
タケル君は用意周到に髭おじさんカート専用のハンドル型のオプションまで買っていて、変なところで凝り性なことにちょっと呆れたりもしたんだけど、いざ使ってみるとより臨場感があって凄く楽しかった。
そのうちに操作も慣れてきてタケル君に勝てるようになってきたころ、タケル君が賭けの提案をしてきた。

「次の勝負、負けたほうが勝ったほうのお願いを聞くってどう?」
「いいよ!私が勝ったらアイス買ってね!」
「じゃあ早速コース選ぼうよ!ヒカリちゃんに選ばせてあげる」

楽しそうにリモコンを操作するタケル君の横顔を盗み見る。
すぐに私の視線に気づいて振り向き、早く選んでと私をテレビ画面に導いた。
どのコースにしようかなぁとタケル君と一緒に選ぶ頭の隅で、そういえばタケル君が勝ったときのお願いを聞いてないなぁとぼんやりと思った。

「このコースでいい?」
「うん!」
「よし、勝負だ!」

画面の中でゲームのキャラクターがカウントダウンを始める。
3,2,1,スタートの合図が鳴ったと同時にタケル君の頬にキスをした。

「なっ!」

動揺して手元が狂うタケル君をそのまま抜き去る。

「やったな!」

気を取り直したタケル君が後ろから猛追してくる。
バナナを置いて進路妨害するけど簡単には嵌ってくれない。
追跡型の亀の甲羅を投げられて、転倒している間にタケル君のカートが私を抜き去った。
私も負けずに雷を落としてタケル君を小さくしている間に加速ブロックで抜き去る。
そのまま引き離して差を広げたいけど、タケル君はそんな簡単に勝利を譲ってくれない。
キノコとジャンプ台で一気に追いついてきて、とどめとばかりに亀の甲羅を投げつけられる。
甲羅をうまく避けたものの、先に行かれてしまったタケル君の視界をイカ墨で邪魔をする。
動きが少し悪くなってアイテムブロックを取り損ねたタケル君の後ろから雷を再度落として追い抜く。
もうすぐゴールで勝てる!と思った瞬間、落ちていたバナナを踏みスリップする。
その隙にタケル君があっという間に抜き去り先にゴールした。

「あー悔しい!勝てると思ったのにー!!」
「まだまだだね」

どっかのテニス王子のような口調で言われるから余計に悔しさがこみ上げる。
頬を膨らます私の顎を掴み、やや強引に振り向かせてタケル君がキスをした。

「スタート直後のキスは反則だよ」
「おかげでいい勝負になったでしょ?」
「まぁね」

顎に掴んでいた手が頬に添えられるから、私もタケル君の肩に手を回した。

「それで、タケル君のお願いは何?」

絶対に人前では見せないような悪い顔で微笑んで、私の耳元に唇を寄せる。
息を多分に含んだ声で私を小さく刺激しながら告げられた言葉は、そんな色っぽい雰囲気など消し飛ばすほど衝撃的で思わずタケル君から離れる。
私が過剰反応してしまったせいか、雨に濡れた子犬のような目をしてタケル君が見つめてくる。
そんな目で見ないでよ。嫌だって言えなくなる。
ううん、嫌なわけじゃない。そんなこと頼まれると思ってなかったから、どうしたらいいのかわからないの。
言葉に詰まった私をタケル君が柔らかく抱きしめた。

「ごめん、調子乗った。…僕のこと嫌いになった?」

まだ何と答えていいのか頭の中に言葉が浮かばない。
だけど、嫌いになったなんてことは無い。こんなことで嫌いになる訳がない。
それだけはどうしても伝えたくて、必死で頭を左右に振る。
眩暈がするほど激しく振り続けていると、タケル君が私の頭を抱き寄せ動きを止めた。

「さっき言ったこと忘れて」

衝撃的すぎて忘れるのは無理だと思う。
でも今はタケル君のために嘘をついて頷く。
抱きしめられた腕の中で、タケル君が大きく安堵したのが分かった。
それでようやく私に言葉が戻ってきた。

「タケル君…他にお願い事何かある?」

見上げるとタケル君は眉を八の字にして私を見つめる。
作り笑顔が板についてるせいで無意識に上がっている口の端が切なくて、手を伸ばしてそっと触れた。

「…名前、呼んでほしい」
「?……タケル君」
「そうじゃなくて…。呼び捨てで、呼んでほしい」

なんだそんなことかと、タケル君の名前を呼ぼうとしたとき、急に恥ずかしくなって言葉が詰まった。
ただ呼び捨てにするだけ。お兄ちゃんだって普通にしてる。なのに、何故こんなに恥ずかしく思えるのだろう。
でも、こんなことでこれ以上タケル君を傷つけたくない。
わずかに潤むタケル君の瞳を見つめながら、震える声で言葉にならない音を紡ぐ。

「…タ、ケ…ル」

心臓の音が耳に響く。
よりうるさく響いているのは私の鼓動とタケル君の鼓動どちらだろう。

「ヒカリ…」

タケル君の声がいつもよりも近く聞こえる気がする。

「…なんだか、照れるね」
「…うん」

お互いに赤い顔で、恥ずかしさを隠すように笑い合う。
タケル、ともう一度勇気を出して呼んでみたら、タケル君はヒカリと私の名を呼び翳り無い笑顔を見せてくれた。