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デジモンタケヒカ二次小説
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cup 相合傘

2018.06.04 Mon

あいつはいつも俺の先にいる。


小学二年生のとき、お台場をヴァンデモンが襲撃してきた。
グレイモンに乗り戦う太一さんの姿を見て、その姿があまりにかっこよくて憧れた。

小学三年生のとき、太一さんと同じサッカークラブに所属した。
キャプテンにしてエースストライカーの太一さんは力強くチームを引っ張り、その年のリーグ優勝まで導いた。
入ったばかりでまだ下手だったから試合には出られるはずもなかったけど、一生この人についていこうと決めた瞬間だった。
思い余って、弟にしてください!と頼んだら、もう先約がいるから…と断られた。

小学四年生のとき、ヒカリちゃんと初めて同じクラスになった。
よく太一さんの応援に来ていたから太一さんの妹だっていうのは知っていたし、密かに可愛いなと思っていた。
同じクラスになって可愛いのはもちろん、誰にでも分け隔てなく優しくてとてもいい子だというのを知って恋をした。
大人になって夢を叶えた俺がヒカリちゃんと結婚して太一さんの弟になる妄想をよくした。
それを現実にすべくヒカリちゃんへのアタックを積極的にするようになった。

小学五年生のとき、太一さんと同じく選ばれし子供に選ばれた。
パートナーデジモンが出来た。仲間ができた。デジタルワールドを冒険した。
太一さんの紋章を引き継ぎ、その力でかっこよくヒカリちゃんを守る俺にヒカリちゃんは恋をして…ということにはならなかった。
そこにはアイツ、転校してきた高石タケルという存在が大きな壁となって立ちはだかったのだ。

タケルが転校してきたとき、ヒカリちゃんと仲がいいのを見ていけ好かない奴だと思った。
そのうち太一さん、ヒカリちゃんと共に選ばれし子供として戦ってきたのだと知り、強い嫉妬を覚えた。
俺が太一さんに出会う前に一緒に冒険してきて戦ったということだけでも羨ましいのに、タケルの野郎はこともあろうにヒカリちゃんにプロポーズまでしていやがった。しかも、ヒカリちゃんもOKしてるって!?太一さんの弟の先約ってお前かよ!!
この時点で、こいつは俺の敵だと認識した。
まぁ、仲間としては強ぇし頼れる奴だけど、それとこれとは別!!
こいつを倒してヒカリちゃんと結婚するのは俺だ!!
…と思って色々と勝負をしたんだけど、タケルの野郎はいつも俺の上を行く。
勉強で勝てないのはもちろん、スポーツテスト、身長、女子人気、ヒカリちゃんの応援度、一番自信のあったサッカー対決でまで負けたときには流石に落ち込みそうになった。
でも、クラスの女子の誰かがヒカリちゃんとタケルの関係を聞いたとき、ヒカリちゃんは友達だって言ってたしタケルのプロポーズのことも昔の約束と言っていた。
ヒカリちゃんのジョグレスパートナーに選ばれたのもタケルじゃなくて京だった。
タケルは明らかにヒカリちゃんのことが好きだけど、ヒカリちゃんはそうじゃなさそうだ。俺にもまだチャンスはある!!
不屈の精神でタケルにいつか勝つことを誓った。


そして、現在中学二年生。俺は鬱々とした日々を過ごしている。





「わー、雨強いね。天気予報で降るとは言ってたけどここまでとは」
「ほんとだ。見事に降ってるね」

昇降口でタケルが外を見て呑気に言う横で、ヒカリちゃんが答える。…自然にタケルの腕に手を回しながら。
そのまま寄り添う姿はお似合いすぎて、悔しい以外の言葉が浮かばない。

「京さん、遅くなるって?」
「ううん。ホームルーム長引いてるだけじゃないかな?すぐ来ると思うよ。ね、大輔君」
「…おう」

俺の名を笑顔で呼ぶヒカリちゃんは相変わらず女神のように美しい。
だからこそ隣で同じように俺を見るタケルの胡散臭い笑顔が余計に鼻につく。
昔からこいつにはムカつかされてきたけれど、相変わらずムカつく野郎だ。

「だー!!お前らちったぁ離れろよ!!」
「きゃっ!!」
「うわっ!!」

くっつくヒカリちゃんとタケルの間に割り込み無理やり引きはがす。

「大輔君、乱暴はやめて!!」
「ヒカリちゃん、大丈夫だった?」

引きはがす前よりよりべったりとくっつく二人。
俺の存在なんか忘れたようにいちゃつく二人にげんなりしてその場に座り込み頭を抱えた。


あれはいつだったか。ある日突然ヒカリちゃんとタケルの関係が変わった。
ダチが言うにはもっと前からだったらしいけれど、俺の目にはある日突然に見えた。
それから二人は人前でいちゃつくことに躊躇が無くなったようで、俺がヒカリちゃんのクラスに行くといつも、友達の距離ではありえない近さのヒカリちゃんとタケルを見せつけられている。
俺がヒカリちゃんのことを好きなことを知っててタケルの野郎がわざとやってるのかと思ったこともあるけど、ヒカリちゃんはそんなことに協力するような子じゃないし、タケルがわざとしてるにしてはヒカリちゃんが積極的に見える。
となるといくら馬鹿な俺でも答えは分かる。タケルだけじゃなくヒカリちゃんもタケルのことが好きなのだ。
多分、俺の知らないところでタケルが告白でもして、ヒカリちゃんはそれを受け入れた。
もともとタケルは昔にプロポーズしていたらしいし、それが告白なのかどうかはわからないけど、一つだけ明らかなのは、タイミングを見計らってと告白を先延ばしにしていた俺はまたタケルに先を行かれたのだ。

「おっ待たせー!!」

俺の気持ちなんか無視するかのように能天気に明るい声が聞こえてくる。
あいつはいつもお気楽そうで羨ましいよ。今の俺のような気分になんかなったことないんだろな。
年上なはずなのにいつまでもお子様で困るぜ。

「京さん!お疲れ様」
「ゴメンねー!ホームルーム長引いちゃって」
「僕たちもさっき来たばかりだから大丈夫ですよ」
「よかったぁ!…で、大輔は何してんの?」
「さぁ…。あ!傘忘れたのかも」
「えー!!朝のニュースで今日は傘が必要って何度も言ってたじゃん!!」
「…うるせぇ!!」

お気楽な京の声に思わず顔をあげる。
悩みなんかなんも無いって言わんばかりの顔に腹が立ってきた。

「お前はいつもノーテンキでいいよなー」
「どういう意味よ?」
「そのまんまの意味だよ!お子様な京には今の俺の深い悩みなんてわからねぇだろなぁ」
「なんですって!大輔のくせに言わせておけば!!」
「大輔君ちゃんと傘持ってきた?」

俺と京の言い合いなんて気にも留めないで、タケルが取ってつけたような笑顔で聞いてくる。
お前、その笑顔に騙されてる女子は多いけど、俺には通じないからな!
ヒカリちゃんもその嘘くさい笑顔に騙されてるのだとしたら俺が救わないと!!

「…大輔君?」

おっと、ヒカリちゃんを華麗に救う俺を想像してたらトリップしてたようだ。
気づかわしげに俺を見るヒカリちゃんに、心配無用とかっこよく親指を立てて笑って見せる。

「あんた、傘持ってきてるかって聞かれてるのに何それ。持ってるでいいの?」
「へ?」
「だから、傘をちゃんと持ってきたかって聞いてるの!」
「…もってない」

京が盛大にため息をつく。
なんだよ。朝はあれだけ晴れてて雨が降るなんて普通思わねぇじゃん。
むしろ俺からしたら、なんでお前ら全員傘持ってるんだよって感じだよ。

「じゃあ、大輔君は私の傘を使って?男の子が持つような色じゃないから嫌かもしれないけれど、濡れるよりはいいと思うから」

いじける俺に笑顔で自分のピンク色の傘を差しだしてくれるヒカリちゃん。
やっぱりヒカリちゃんは優しいなぁ。学校だってのにその美しさと優しさで後光が差して見える。
女神から伝説の剣を授かる勇者のように、両手で恭しく傘を受け取ると京の声が聞こえてきた。

「このバカは濡れても風邪なんてひかないから、ヒカリちゃんの傘貸すことなんてないよ」
「いいの。私はタケル君の傘に入れてもらうから」
「じゃ、一乗寺君の家に行こうか」

タケルがバサッと音をたてておっさんが持つような真っ黒な傘を開く。
その中にヒカリちゃんが吸い込まれるように入り並んで歩き出した。
呆気に取られている俺の背中を京が叩いたことで正気に戻り、慌ててヒカリちゃんの傘を開いて二人に追いつく。
正面に回ると、傘の柄を持つタケルに腕を絡ませて過去一番に密着して歩く二人の姿が見えた。

「ずりーぞタケル!!その傘、俺に貸しやがれ!!それで俺が相合傘をする!!」
「何言ってるの大輔君。いくら僕でも男と相合傘なんて嫌だよ」
「だー!!そうじゃなくて!!」
「私の傘はピンクだから嫌かもしれないけど我慢してね」
「ヒカリちゃんの傘が嫌なわけじゃなくて!!」
「じゃあ、何が不満なの?」

何が不満って、お前とヒカリちゃんが相合傘してることだよ!!
わかってるくせに煽ってるだろ。そういうやつだよ、高石タケルってやつは!!

「ってか、その傘なんかデカくね?」
「あぁこれ?ヒカリちゃんが濡れないように大きなやつを買ったんだ」
「前の傘は二人でギリギリの大きさだったよね」
「ギリギリどころか少しヒカリちゃんを濡らしちゃってたから買い替えたんだ」
「そうなの?でも、前の傘もタケル君と沢山くっつけて好きだったよ」
「この傘でも前のと同じくらいくっついてくれる?」
「もちろん」

目の前にいる俺の存在なんて見えてないかのように、キスでもしそうな距離で話しながら俺を置いて歩いていくタケルとヒカリちゃん。
呆然と見送る俺に、少し後ろから歩いてきていた京が声をかけてきた。

「あの二人ラブラブだからあんたの入る隙なんて無いよ。もう諦めたら?」
「うるせぇ!男には引けないときがあるんだよ!!」

あいつはいつも俺の先を行く。
選ばれし子供に選ばれたのも、太一さんと出会ったのも、ヒカリちゃんと出会ったのも。
それが俺とあいつとの埋められない差だとしても、そのままにしておくのは負けを認めたみたいで嫌だ。
何か一つでもタケルの先を行きたい。
一つでも勝って、そして俺はタケルを振り返りながら言うのだ。
「ヒカリちゃんはお前に任せた!」と。

それまではおまえがどれだけ嫌がってもヒカリちゃんを諦めてなんかやらないからな!!