speranza

デジモンタケヒカ二次小説
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cup ファーストキス

2018.05.23 Wed

夕焼けが空を包み、影を長く伸ばす。
夜が近づく静けさの中、僕とヒカリちゃんはゆっくりと歩いていた。

今日は想いが通じ合って、初めてのデートだった。
二人で出かけるのなんていつものことだから恋人という関係性になっても何も変わらないだろうと思っていたけれど、ふとした瞬間に今までと違う空気が流れて僕の心臓は跳ね上がった。
今だって、周りの音は静かなのに、僕の心臓の音だけがうるさく鳴り響いている。
ただ、手を繋いでいるだけなのに。
俗にいう恋人繋ぎじゃない。ただ、手を重ねているだけ。
それだけなのに、繋いだ僕の左手は彼女の手を握りつぶしてしまわないように指先まで緊張し、手には汗をかいている。
昔、僕たちが小さかった頃は手を繋ぐなんてしょっちゅうだったのに、なぜこんなにも震えるほど緊張するのだろう。
こんな情けない男と手を繋ぐのは嫌じゃないだろうかとヒカリちゃんの顔を盗み見ると、少し伏し目がちに足元を見ているけれどその口元は微笑んでいた。
慌ててヒカリちゃんから目を離す。
キスしたい。ヒカリちゃんの小さな唇をみて思ってしまった。
手を繋ぐだけでこんなにもガチガチになっているのに、なんて大胆なことを考えてしまったんだろう。
思わず繋いだ手に力を込めるとヒカリちゃんの声が聞こえてきた。

「…緊張するね」

たったそれだけだけど、ヒカリちゃんも僕と同じなのだと伝わる。
彼女の鼓動と僕の鼓動が重なった気がして、ほんの少しだけ緊張が解けた。

「キス、したい」

短く呟いた僕の言葉にヒカリちゃんの足が止まる。
半歩分進んでしまってから振り返ると、夕焼けの中でもわかるくらいヒカリちゃんの頬が染まっていた。
本当は手を繋ぐだけで精一杯なくせに、ガツガツした男と思われただろうか。
ごめんと謝り無かったことにしよう。それがいい。
こんなことでヒカリちゃんを失いたくない。

「ごめ…」
「私も!」

頭を下げた僕に聞こえてきたのは、思ってもなかった言葉。
恐る恐る頭をあげると、今にも泣きだしそうなヒカリちゃんがいた。

「…私も…キス、したい」

覚えたてのように片言に伝えられた言葉に勇気をもらい、ヒカリちゃんの頬に手を伸ばす。
そっと触れた瞬間にヒカリちゃんの体がびくりと反応した。
少しだけ顔をあげさせる。
眉を下げ弱々しく笑うヒカリちゃん。それに応えて笑う僕も情けない顔だろう。

「目、閉じて…」

僕の言葉にヒカリちゃんの瞼が閉じられれる。
吸い寄せられるようにヒカリちゃんに顔を近づけ唇を重ねた。

カチッ

およそロマンチックとは程遠い音が鳴る。
慌ててヒカリちゃんから離れた。

「ご、ごめん!初めてだから上手くできなくて!!」

狼狽する僕の姿を見て、最初は面食らった様子だったヒカリちゃんが笑い出す。

「初めてだから上手くできなかったけど、これから!これから上手くなるから!!」

なんでこんなに必死なんだろうと自分で思うぐらい言い訳を重ねる僕の姿を見てヒカリちゃんは微笑み、僕の手に触れた。

「私も、初めてだから…上手くできなくてごめんね」

ヒカリちゃんの言葉に心臓が大きく鼓動を打つ。
もう一度ヒカリちゃんの頬に手を伸ばす。
今度はヒカリちゃんの体は跳ねず、代わりに小さく震えた気がした。
自然と顔を近づける。
応えるようにヒカリちゃんの瞼が閉じられ、お互いの唇が重なった。
ヒカリちゃんの柔らかく温かい唇の感触に、好きという気持ちが溢れて仕方がなかった。