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デジモンタケヒカ二次小説
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cup ヘアゴム

2018.05.23 Wed

「タケル君!!ゴメンねー!!」

待ち合わせの時間にほんの少し遅れてきたヒカリちゃんが駆け足で近づいてくる。
その申し訳なさそうな表情と、いつもとちょっと違う髪型が可愛い。
だから、駆け寄ってきたヒカリちゃんをそのまま抱きしめた。

「ちょっと!走ってきて汗臭いから!!」
「大丈夫。ヒカリちゃんはいつでもいい匂いだから」
「もう!!」

一生懸命に僕の腕から逃れようとするヒカリちゃんの首筋に顔を埋めて、わざと目一杯息を吸う。
変態!と罵られた気がするけど、よく聞こえなかったなぁ。
抱きしめたまま目を合わせてニッコリ笑うとヒカリちゃんがたじろぐから、鼻先にちょんとキスをして珍しく後ろで結ばれた髪を指ではじいた。

「結んでるなんて珍しいね」
「あ!これのせいで遅れちゃったの」

一瞬の隙をついて、ヒカリちゃんが僕の腕から逃れる。
急に自由になった両腕に一抹の寂しさを感じながらも、誤魔化すようにヒカリちゃんの髪型が崩れないように髪をそっと触った。

「今日、寝癖酷くて、何しても全然治らなくて…。やっとの思いで結んでたら遅くなっちゃった」
「結んでるのも似合ってる。可愛いよ」
「ありがとう。…遅れちゃってごめんね?」

さすがヒカリちゃん。上目遣いに僕が弱いって知ってるなぁ…。
別にどれだけ待たされてもヒカリちゃんに怒ったりなんてしないけど、その顔で見つめられたらなんでも許したくなっちゃうよね。
怒ってないことを伝えるために、ヒカリちゃんの頭をよしよしと撫でる。
嬉しそうに笑った後に、髪型が崩れてないか気にするところがやっぱり女の子だね。

「そのゴムもよく似合ってるよ」
「本当!?これ、空さんとミミさんと色違いのお揃いで買ったの!!」

ヒカリちゃんの表情がパァッと明るくなる。そして、もっと見てと言わんばかりに結んでるヘアゴムを僕のほうに向けた。
女の子のファッションには詳しくないけど、レースや何種類かの布で作られた白い花がヒカリちゃんによく似合ってる。

「この色、テイルモンみたいだなって思って。空さんはピヨモンカラー、ミミさんはパルモンカラーを買ったのよ」

言われてみれば確かに、白を基調に紫と黄色をさりげなく配置した色使いがテイルモンに見える。

「だから、ヒカリちゃんによく似合ってるんだね」

心に浮かんだことをそのまま伝えると、ヒカリちゃんは少し照れたように頬を赤らめて微笑む。
その顔がとても可愛くて、僕の顔にもヒカリちゃんの熱が移ってしまって、思わず視線を逸らした。
するとヒカリちゃんの手が伸ばされ、帽子に隠れてない僕の髪を一房とり指先で梳いた。

「タケル君の髪、サラサラで綺麗だよね」
「どうしたの?」
「ううん。寝癖と無縁そうでうらやましいって思っただけ」

あまり人目に晒したくない他人と違う自分の髪。
こればかりは何度ヒカリちゃんに褒められても素直に受け入れられない。
他の女の子とかに褒められたときは普通に愛想笑いで返せるのに、なぜかヒカリちゃんにだけは笑おうにも顔が引きつる。
多分また微妙な顔をしていたんだろうな。ヒカリちゃんは小さく首を振り、誤魔化すように自分の髪を触った。

「私の髪は太くて固いから。私もお兄ちゃんと同じなんだけど、これだけは似たくなかったかな」

不満げな表情をしてるけど声色はちょっと嬉しそうなんだから、ついつい太一さんに嫉妬しちゃうよ。
とは言っても、お兄ちゃんと同じってワードは僕も嬉しいんだけどね。
他人と違っても兄とは同じだということは、この上ない安心感を僕に与えてくれる。
ヒカリちゃんは僕が喜ぶ言葉を知っている。それは僕たちは特別な関係なんだって実感させてくれて二重に嬉しい。

「太一さんの髪、確かに固そうに見えるけど、ヒカリちゃんの髪と同じだなんて思わなかったよ」
「これでも色々と頑張ってるからね。お兄ちゃんの髪型なんて、寝癖ほぼそのままなんだから!」
「それは知らなかった」
「本人は無造作ヘアとか言ってるけどね…」

記憶の中の太一さんを見て呆れたように笑うから、目の前の僕を見てほしくてヒカリちゃんの両手をとる。

「じゃあ、僕たちの子供が生まれたら僕似の髪がいいかな?」
「こどっ……!!」

それっきり絶句して、ヒカリちゃんは固まってしまう。
ヒカリちゃんの頭の中から太一さんの存在が完全に消えたことにほくそ笑み、ヒカリちゃんに軽くキスをした。
それを合図にヒカリちゃんの顔がみるみる赤くなり、僕をポカポカと何度も叩く。

「バカ!バカッ!!タケル君のバカァ!!」
「あはは。ごめんごめん。でもいつか必ず生まれるんだから」
「だから、そういうことは今言わなくていいの!!」

どれだけヒカリちゃんに叩かれても痛くないけれど、ちょっとからかいすぎたかな?
ヒカリちゃんが涙目通り越して今にも泣きそうな顔してるのはいただけない。
僕を叩き続けるヒカリちゃんの両手首を捕まえて至近距離で目を合わせた。

「からかいすぎた。ごめん」

電池が切れたかのようにヒカリちゃんの動きが止まり、そのまま僕の胸に寄り掛かる。
僕に体を預けるヒカリちゃんを支えるように、彼女の腰に手を回した。

「会って数分で疲れた…」
「ごめん」
「タケル君の冗談は冗談になってないよ…」
「今度から気を付けるよ」
「ほんとに、お願いよ?」

ヒカリちゃんの視線に頷き微笑むと、ヒカリちゃんは満足そうに笑い、そして小首を傾げた。

「今日、どうする?」
「そうだな。雑貨屋に行きたいんだけど、どう?」
「いいけど。どうして?」

僕の提案にヒカリちゃんは不思議そうに質問を返す。
理由なんて決まってる。

「ヘアゴムをプレゼントしたことなかったから、いくつか選んでヒカリちゃんにプレゼントしたいなって」
「普段結ばないよ?」
「でも、たまに結ぶでしょ?そういうときに僕があげたの身に着けてて欲しいからさ」
「…今日の嫌だった?」

ヒカリちゃんが僕の表情を伺うように尋ねる。
嫌なわけじゃない。そのヘアゴムはヒカリちゃんによく似合ってる。
でも、そういう問題じゃないんだよね。

「もし他の男といるときにそれをつけられたら嫌だな。たとえ太一さんでもね」

他の男の前では必ず僕が選んだものを身に着けていてほしいという独占欲を隠すために、似合いすぎてるから他の人に見せたくないと最後に一言付け加えると、ヒカリちゃんはちょっと不服そうに僕の頬をつねった。

「いたたた…」
「そんなに痛くないでしょ。タケル君はいちいち大げさなのよ」
「バレたか」
「バレバレ。…まぁいいや。今日はタケル君のご厚意に甘えようかな」

ヒカリちゃんが僕から離れて、振り返りながら微笑む。
歩き出すヒカリちゃんの手を取り指を絡めれば、小さく握り返してくれた。

「髪の毛伸ばさないの?」
「うーん…ミミさんみたいにヘアアレンジできるほど器用じゃないし…」
「ロングヘアも似合うと思うけど」
「タケル君はなんでも可愛いって言うからなぁ…」
「だってヒカリちゃんは可愛いからね」

返事の代わりに繋いだ手に軽く爪を立てられる。
わずかな痛みに大袈裟に痛がってみせると、ヒカリちゃんは僕の手を引き寄せた。

「他の女の子に、あんまりそういうこと言わないでね」

視線を合わさず小さく呟かれた言葉が愛おしい。
溢れる気持ちそのままに、ヒカリちゃんの髪にキスをする。

「ヒカリちゃんと他の子とじゃ言葉の意味が違うよ」
「なにそれ」

納得いかないと言わんばかりに膨れっ面で見上げるヒカリちゃんに微笑みかけて、彼女の耳元に顔を寄せた。

「ヒカリちゃんだけが僕の本心。あとは社交辞令」

ヒカリちゃんが繋いだ手を無言で振る。
人間関係円滑化にはリップサービスも必要でしょ?と営業スマイルを披露したら、大きなため息をつかれた。

「私、独占欲強いのかなぁ…」

遠い目をしながらそんな嬉しいこと言わないでよ。
自分の性格が悪いって自己嫌悪してるのかもしれないけど、安心していいよ。
だって…

「僕には負けるんじゃない?」

さらりと告げるとヒカリちゃんは虚を突かれたように瞬く。
同意を求めると、可愛い顔をほころばせた。

「タケル君に勝てないかな?」
「自分で言うのもなんだけど相当だからね」
「それは知らなかった」

クスクスと笑うヒカリちゃんから手を離し、足を止め彼女のヘアゴムにそっと触れる。

「今日だって、これが他の男から貰ったものだったらすぐに外して捨ててたよ」

ブラコンのヒカリちゃんのために、太一さんは例外だけどと嘘をつくのも忘れない。

「…なんだか大変な人を好きになっちゃったみたい」
「お互い様じゃない?」
「かもね」

離れた手を再び繋ぐと、ヒカリちゃんはそのまま僕の腕に腕を絡めた。
二人の距離が近づきヒカリちゃんの体温がより伝わってくる。
お互いに微笑み合い再び歩き出した。

「私もタケル君にヘアゴム何か選ぼうかな…」
「僕はいらなくない?」
「でも、タケル君女装したら綺麗だと思うよ?」

爆弾発言を落としニコリと笑うヒカリちゃん。
今日のデートは荒れる予感がする…