speranza

デジモンタケヒカ二次小説
<< 2018Jan. Feb. Mar. Apr. May Jun. Jul. Aug. Sep. Oct. Nov. Dec. 12345678910111213141516171819202122232425262728293031>>

Admin  |  New entry  |  Up load  |  All archives

| main | Next Entry |

cup 幸せの形

2019.01.14 Mon

 夢を見た。
 目が醒めた瞬間に、現実のように思ってたはずの世界は僅かな欠片を残して消えてしまい、どんな夢を見ていたのか詳しく思い出せない。
 ただ、とても悲しい夢だった。
 これでいいんだ。これが幸せなんだ。そう自分に言い聞かせて、心の願いと違う現実に幸せなフリをして笑う。そんな夢。
 ぼんやりとした頭で寝返りを打つと、眠る前には隣にいたはずの人の姿がなく、ベッドの上には自分一人だけ。

――先に起きたのかな。

 頭は冷静に状況を分析してるのに、なぜか視界が涙で滲んだ。

「あ、あれ?」

 両手で目をこすって、自分は何に泣いているのか考えるけど、理由がわからない。
 ただ、悲しみと不安がこみ上げる。
 抑えきれず、ついに涙がこぼれ落ちた瞬間、呑気な声が聞こえた。

「ヒカリちゃん、おはよう。朝ごはん作ったよ……って、泣いてるの?」

 慌てた様子で駆け寄ってくるタケルの姿がなんだかおかしくて、ヒカリは涙に濡れた目をこすりながらクスクスと笑った。

「おはよう、タケルくん」
「どうしたの? 昨日無茶しちゃったせいで、どこか痛む?」
「ううん」
「じゃあ、怖い夢でも見た?」
「うん。怖い夢、見た」

 心配してヒカリに目線を合わせるタケルに抱きつくと、タケルの手が背中に回り、肌の滑らかさを確かめるように、何も身につけていない背中を撫でる。
 昨夜の余韻を思い出させるような感触に、ヒカリは熱い息を吐き出し、タケルの耳元に唇を寄せた。

「詳しいことは覚えてないの。ただ、私は別の人と結婚して、これが幸せなんだって自分に言い聞かせてた」

 ヒカリの言葉に、タケルは目を丸くしてヒカリを見る。
 ただの夢と繰り返すヒカリを強く抱きしめ、タケルは首筋に顔を埋めた。

「今は? これが幸せだと自分に言い聞かせてる?」
「……ううん。言い聞かせなくても、心が知ってるの。これが本当の幸せだって」

 ふわりと微笑むと同時にタケルが首筋に噛み付く。
 自分を犯す甘い痛みに声をあげると、タケルはヒカリを押し倒しベッドに組み敷いた。

「朝ごはん、冷めちゃうよ?」
「結婚初日に別の男の夢を見られて、僕が平気でいられると思う?」
「ただの夢よ」
「夢でも嫌だ」

 むくれるタケルを見て楽しそうに響くヒカリの笑い声をキスで塞ぐ。
 溶け合うほどの長く深いキスのあと、ヒカリは晴れ渡る空のような青い目を覗き込んだ。

「私、今とても幸せ」
「僕は嫉妬で気が狂いそう」

 肩をすくめ、おどけた様子で言ってみせるけど、目は本気。
 夢にすら嫉妬するタケルにヒカリは笑い、目を閉じる。
 すぐに頭が真っ白になるような刺激が身体中を走り、タケルのこと以外何も考えられなくなった。



幸せに形があるのなら、きっと私の幸せはタケルくんの形をしているの。
どこかの誰かが決めた幸せの形よりも、ずっと素敵で私を満たしてくれる。
私だけの幸せの形はここにある――