speranza

デジモンタケヒカ二次小説
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cup いつか、必ず

2018.05.11 Fri
※tri4章ネタバレ注意※






デジタルワールドに夜がくる。
僕たちには見慣れた、けれど懐かしい夜が。




パートナーデジモンと再会して、最初の夜。
気持ちよさそうに眠るデジモン達の側で僕らは火を囲み、これからのことを話し合っていた。

「あーー懐かしいなぁ。昔もこうやってみんなで火を囲ったよね!」
「そうだな。ガブモン達がいたから火起こしには困らなかったが、今から思えば幸運なことだったな」

ミミさんが火に手を翳しながら楽しそうに言う。
答える兄は、わかりづらくテンションが上がっているのか、珍しく口数が多い。

「ライターとか沢山持って来たんだけど要らなかったかな」
「すぐ成長期まで進化出来るとは思いませんでしたね」

丈さんが苦笑しつつ言うので、受け答えをするが自然と笑顔になる。
パートナーに会うまでは不安でいっぱいだった。
けれども会ってしまえば、記憶が無いことよりも会えた喜びの方が上回った。
しかも、空さんのお弁当を沢山食べてひと眠りしたら進化していたのを見た時は、絆は消えずに確かに残っているのだと実感して心の底から嬉しかった。
だから自然と声が明るくなり、頬が緩む。
だけど、目の端にぼーっと火に小枝をくべる空さんの姿が見えて、慌てて顔を引き締めた。

「お兄ちゃん、大丈夫かな…」

プロットモンを膝に乗せ撫でながらヒカリちゃんが呟く。
光子郎さんは僕らの会話は聞こえてないのか、ひたすらキーボードを叩いている。
会話が途絶えふと無音になった瞬間、林の向こうから帰ってくる太一さんの姿が見えた。
ゆがみ、そしてメイクーモンの話になる。
ミミさんが望月さんを連れてくればよかったと言うので、望月さんをフォローするつもりで答えたら、言葉のチョイスを間違えたようでミミさんから突っ込まれた。
慌てて言葉を重ねて言い訳する中で、思わず「ほっとけない」と答えたら

「へーーーーーーー」

ヒカリちゃんから思いっきり白い目で見られてしまった。
うわ、やっちゃった!と内心慌てながらも平静を装って、どうしたの?と返せば、気になる?と返ってくる。
心配しなくても僕の一番は………

「ヒカリちゃんだよ」と声に出す寸前のところで自分の言わんとしてる事の重大さに気付いて、兄に笑顔を向ける。
ね?とにっこり笑えば、僕の一番はお兄ちゃんって言おうとしたとみんな勘違いしてくれて、ホッとした。
あやうく公開告白するところだった…
仲間全員の前で公開告白とかなんの罰ゲームだよ…
そもそもゆがみにリブートに大変な中で、好きだとか言っても困らせるだけ。
ヒカリちゃんには、もっとちゃんとした状況で思いを伝えたい。
僕のことだけしか考えられなくなるような、そんな雰囲気を作って…
みんながさっきのやりとりに笑っている中でそんなことを考えていたら、空さんがふらふらと立ち上がり僕らの輪から離れていった。
追いかけるようにと兄を肘で小突けば、ヒカリちゃんも同じように太一さんを促していた。
空さんに関しては、僕とヒカリちゃんはライバルでもある。
三人が離れていったタイミングで光子郎さんが顔を上げた。

「やはり大きなゆがみの発生予測はほぼ不可能ですね」
「いつ起こるか全くわからない?」
「ええ。地道にメイクーモンを探すしかありません」
「今やれることは何もないってことか…」
「じゃあ、寝ようよ!なんかいろいろあって疲れちゃったし!夜更かしはお肌の大敵!!」
「ミミくん…」
「そうですね、今のうちに睡眠をとったほうがいいかもしれません」
「でしょ、でしょ!!」
「せめて太一たちが戻ってくるまで待とうよ…」

光子郎さんたちの会話をよそに、ヒカリちゃんはしきりに太一さんたちが消えていった方向を気にしている。
空さんのことは太一さんと兄に任せたほうがいいとわかっていても、太一さんと離れていると不安なのだろう。

「じゃあ、僕とヒカリちゃんでお兄ちゃんたちを待ちながら火の番をします。光子郎さん、丈さん、ミミさんは少し休んでください」
「いや、最年少の君たちには任せられないよ。ここは最年長の僕が!」
「いえ、徹夜には慣れてますので僕がします」

丈さんと光子郎さんに言われて、思わず笑ってしまう。

「もう小学二年生じゃないんですよ?今の僕たちは、あのときの丈さんよりも年上です」
「あぁ、そういえばそうだったね」
「あのときのタケル君こーんなに小さかったのにねー!!」

ミミさんが手で僕の身長を再現する。そんなに小さくないでしょと突っ込んだら笑いが起きた。

「あのとき僕は守られてばかりでした。今度は僕にも守らせてください」
「言うようになったね」
「私も、タケル君と同じです」

ヒカリちゃんがふわりと微笑み、僕の言葉にうなづく。
それで光子郎さんも丈さんもミミさんも納得して、横になり眠りはじめた。
三人の寝息が聞こえ始めたころ、ヒカリちゃんが口を開いた。

「お兄ちゃん達、遅いね…」
「空さん、少しでも元気が出てるといいけど…」
「お兄ちゃんもヤマトさんも、たぶん気づいてないよね…」
「うん。だけど、僕たちの言葉よりもお兄ちゃん達の言葉のほうが届くはず」
「そうだね…」

焚火から目を離さずヒカリちゃんが話す。
太一さんのことが心配だし、離れている不安がだんだんと大きくなってきているのかもしれない。
ここには僕がいるのに。僕が君を守る。
どれだけ強く思っても、言葉には出来ない。
ヒカリちゃんに対して“好き”の意味が少し変わってきた頃、“守る”と簡単に言えなくなった。
もし、口に出して君に伝えたら、僕は太一さんに代われるだろうか…

「さっき、なんで来なくてよかったなんて言ったの?」

一瞬、何を聞かれているのかわからなくて、顔をあげるとヒカリちゃんと目があった。
途端に質問の意図を理解して、思わず目をそらすと名前を呼ばれて引き戻された。

「やきもち?」
「タケル君」

軽口でごまかそうとしたけれど、それを許してはくれないらしい。
大きく息をはき、夜空を見上げた。
デジタルワールドの星空は、東京の空より明るく星が輝いている。

「メイクーモン、望月さんのこと覚えてたね」
「うん…」

メイクーモンが望月さんの名前を呼んだ瞬間、リブートは無駄だったとおそらく全員が悟った。
もし、望月さんが一緒にいたとして、メイクーモンに記憶があったことを瞬時に喜べるのはミミさんだけだろう。
ゆがみと感染の元凶がメイクーモンだとしても、リブートはホメオスタシスの意思であり望月さんが悪いわけではない。
それはみんな分かっている。だけど、感情は理屈で割り切れない。
感染の原因と聞かされて、沸き上がった怒りを飲み込んだのはついこの間のこと。
過去のたらればに囚われても意味はない。
大事なのは今、これから。
頭ではわかっても、心に折り合いをつけるのに必要な時間は人それぞれだ。
そして、ピヨモンとうまくコミュニケーションが取れてないこともあり、空さんが一番時間がかかっている。

「たぶん、いたら抑えられなかったと思うんだ」

成長するにつれ、本音を隠すことを覚えた。
良い感情も悪い感情も、心のままに言葉に出すことが出来なくなった。
昔からみんなのお母さんだった空さんは特にその傾向が強い。
けれども、心を完全に御することなんてできない。思わず怒りをぶつけてしまうことだってある。
そうしたら、誰よりも傷つくのは空さんだ。

「僕も、パタモンの声が聞こえなければ抑えられなかった」

全てを言葉にすると枷が外れそうで、口から出る言葉は簡単になる。
でも、それでもヒカリちゃんには全部伝わっているだろう。
僕たちの関係は、それだけ近い。
そっかと小さく呟いて、ヒカリちゃんは俯いた。
悩ませてしまっただろうか、落ち込ませてしまっただろうか。
どんな言葉をかければいいのかを迷っていたら、ヒカリちゃんは突然顔をあげて、いたずらっ子の目をしてニヤッと笑った。

「…ほっとけない?」
「あれは、言葉のあやって言うか…!」
「芽心さん可愛いもんねー」
「だから、さっきも言ったように僕の一番は…」
「一番は?」

言葉に詰まったところで、思わず見つめあう。
するとヒカリちゃんが声をあげて笑い出した。
一本取られたことに気づき、手を額にあて天を仰ぐ。

「やられた…」
「私の勝ちだね」

楽しそうにヒカリちゃんが笑う。
不安そうな顔したヒカリちゃんも庇護欲を掻き立てられて好きだけど、やっぱり笑顔が一番好きだ。
何より僕を見て笑う時は、僕だけのヒカリちゃんだ。
ヒカリちゃんの可愛い笑顔を見つめていると、何かが気になったのか数度瞬いた。

「タケル君、昔の口調に戻ってるね」
「あ…言われてみればそうかも?」

指摘されて初めて気づく。
懐かしいデジタルワールドにきて、昔の口調に戻っていたらしい。
そういえば一人称も僕になってたかも?と思い当った途端に恥ずかしくなってきた。
学校では、というよりヒカリちゃんの前でかっこつけるために一人称を俺にしていたのだけど、おそらく完全にバレた。
あまりの気恥ずかしさに思わず膝を抱えて蹲る。
そうしたら、ふふっと笑うヒカリちゃんの声が聞こえてきた。
抗議の視線を送ろうと顔をあげると

「私はそっちのタケル君のほうが好きよ」

とても綺麗な微笑みと共に紡がれる殺し文句。
一気に顔が熱くなり、崩れる表情を隠すために顔を俯ける。
頬がだらしなく緩むのを止められない。

「ヒカリちゃんにはかなわないなぁ」

思わず口に出して呟くと「私の一番もお兄ちゃんだよ」と聞こえてきた。
言葉そのままの意味か、それとも僕と同じ意味か。
まだそれを聞く勇気はない。
けれどいつか必ずそれを聞くから。
いつか、あっという間に大人になる前に、必ず。