speranza

デジモンタケヒカ二次小説  ※無断転載禁止
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cup はじめに

2037.06.11 Thu

デジモンアドベンチャー 高石タケル×八神ヒカリ の二次創作小説をひたすら更新するブログです。
自分がいろんな場所で書いた二次創作の倉庫代わりにしています。


地雷は、太一×ヒカリ(近親相姦は創作だろうと生理的に無理。気持ち悪い)
それから芽心(存在自体がダメ)
タケル×ヒカリ→太一も、タケルが当て馬にされているとしか思えないので不快で嫌いです。
太一を含むタケヒカを探している方はお帰りください。

純粋に“タケヒカ”が好きな方に、創作物を楽しんでいただければ嬉しいです。


他カプは、光ミミ(固定)
太一、ヤマト、空は作品ごとでカップリングが違っていますが、太空が多いです。

現在R18パスワードは親しい方のみにお教えしています。
それ以外の方にパスワードをお教えする予定はいまのところありません。

無断転載は厳禁。

感想や連絡等、何かありましたらメールフォームをご利用ください。
お返事が必要な場合はメールアドレスの入力をお願いいたします。
(荒らし、誹謗中傷目的と判断した文章は躊躇なく晒しますのでご了承ください)


かの

pixiv】 【BOOTH



cup 熱いのはお好き?

2019.06.11 Tue

 よく晴れた休日。ヒカリちゃんとショッピングを楽しんだ帰り道、漂ってきた美味しそうな匂いに、ふと足を止めてしまった。
 ヒカリちゃんも同じように足を止め、匂いの元へと視線を送っている。
 時計の針は、夕方には少し早い時間を指し示す。ちょうど小腹が空く頃だ。

「食べていこうか」
「うん!」

 屋台の焼きそば然り、ソースが焦げる匂いってのは、どうしてこうも食欲を掻き立てるのか。
 嬉しそうに頷いたヒカリちゃんと一緒に、美味しそうな匂いを漂わせるタコ焼き屋へと足を踏み入れた。



「あちっ!」

 夕食に響かないよう、8個入りのタコ焼きを半分ずつ食べることにした。
 焼き立ての、鰹節踊るタコ焼きを丸ごと頬張る。
 中身は想像以上に熱くトロけ、口の中が一気に熱くなる。自然とはふはふと開いてしまう口から灼熱のタコ焼きを逃してしまわないよう必死で噛み砕き、出汁のきいた生地とタコに、ソースとマヨネーズが絡んだ絶妙な組み合わせを味わった。

「大丈夫? 一口で食べるから……」

 熱々のタコ焼きに勝利し、水を一気飲みして口内を冷やす僕を見て、ヒカリちゃんはちょっと呆れたように笑う。
 僕の二の舞にならないようにか、ヒカリちゃんは備え付けの割り箸を取り、タコ焼きを真っ二つに割って、その片割れにふーふーと息を吹きかけて熱さを和らげる。
 タコ焼きから漂う湯気がちょっと少なくなり、食べごろの熱さになった頃合いで、それを自分の口に運ぶと思いきや、僕の目の前に差し出した。

「はい。これで熱くないよ」

 ……これはいわゆる、恋人にあーんと食べさせるあれだろうか。
 いや、僕とヒカリちゃんはまだ付き合ってはいないから、恋人とは言えないけど。

「タケルくん?」

 固まってしまった僕に対し、ヒカリちゃんは不思議そうに首を傾げる。

 ヒカリちゃんはきっと親切心でしてくれてるだけだ。
 ……この心遣いを無下にしてしまうほうが失礼だろう。

 下心は無い、下心は無い、下心は無い、下心は無い……

 何度も自分に言い聞かせながら、目の前のタコ焼きにかぶりついた。
 僕の口の中に無事にタコ焼きが運ばれたことに嬉しそうに微笑みながら、ヒカリちゃんの箸が離れる。

「どう? 熱くない?」

 タコ焼きは熱くないけど、顔が熱い。
 美味しいかどうか聞かれても、別のことで頭がいっぱいで味が全然わからない。

「あ、タコが入ってないほうあげちゃったかな?」

 もう一度ヒカリちゃんが僕の前にタコ焼きを運ぶ。
 さっきの余韻で、動悸が酷くて食べれそうにない!
 まだ口の中に残ってるから、ヒカリちゃんに食べてほしいということをジェスチャーで伝えると、ヒカリちゃんは僕に差し出していたタコ焼きを自分の口に運んだ。

 ……それは、さっき僕が口をつけた箸!

 意図せず間接キスをさせてしまったことにゴクリと喉が鳴り、未だ全く噛み砕けてないタコ焼きが胃に落ちていく。

「やっぱりこっちにタコが入ってた! ごめんね」

 ごめんは、こっちのセリフだよ!
 うっかり、ヒカリちゃんに間接キスをさせてしまった。
 かと言って、彼女が気づいてないことを言葉にして謝ることもできず、とりあえずタコが入ってなかったことに怒ってないことを伝えるため、ぶんぶんと首を左右に振っていると、ヒカリちゃんがタコ焼きをもう一つ箸で半分に割った。

「あ! 今度はどっちにタコが入ってるかちゃんとわかる!」

 タコの入ってる方を持ち上げ、先ほどと同じように息を吹きかける。
 そして、どうぞと屈託の無い笑顔で僕の目の前に差し出した。
 
 ……これは、ヒカリちゃんが先ほど咥えた箸。
 つまり、これを口にすれば僕もヒカリちゃんと間接キスをすることになる。

 全身が心臓になったようにうるさく音が響く。
 緊張のあまり大きく息を飲んだ音が、彼女に聞こえなかっただろうか。
 これ以上ヒカリちゃんを待たすわけにはいかないし、据え膳食わぬは男の恥って言うし……食べても、いいよね?
 パクリと箸ごとタコ焼きを口に入れ、口を閉じたまま箸だけ出す。

 ついに、してしまった! ヒカリちゃんと間接キス!

 口の中のタコ焼きは確かにソース味なのに、何だか甘酸っぱくて、花の香りがする気がする。
 ヒカリちゃんと同じ、甘くて胸が締め付けられる香り。

「美味しいね」

 残ったもう半分を食べながら、ヒカリちゃんが微笑む。

「……そうだね」

 今まで食べたタコ焼きの中で、一番美味しい。
 ヒカリちゃんは、僕たちが間接キスをしたことには気づく様子が無いけど、そういうところヒカリちゃんらしいし可愛いなと思う。
 だけど、他の男に同じことしないように釘刺さなきゃなと考えながら、ヒカリちゃんに微笑み返した。


 その後も、最後の一個まで、半分に割ったタコ焼きをヒカリちゃんに食べさせてもらった。
 他の客には、このバカップルが……という目で見られていたのは言うまでもない。




cup 彼も私もこし餡派

2019.04.10 Wed

 世の中はゴールデンウィーク。
 まとまったお休みに友達や家族と旅行や遠出をする人は多いけど、残念ながら私にはこれといった予定が無い。
 人混みは苦手だし家でゆっくりしてる方が好きだから、とくに不満は無かったけど、連休の最終日となると少し家にいるのも飽きてきた。
 ダメ元でタケルくんに連絡してみたら彼も家でダラダラしてるらしい。
 せっかくのゴールデンウイークだし、それなら一緒に出掛けようとタケルくんを誘って少し遠くの町までやってきた。


「ヒカリちゃんどれにする?」
「タケルくんは?」

 中腰で尋ねるタケルくんの目線の先には、沢山並んだかしわ餅。
 今日はこどもの日だと宣伝する、のぼりにつられて立ち止まった和菓子屋さん。
 せっかくだから一つずつ買って公園で食べようと話して、どれを買おうか二人で店先のかしわ餅と睨めっこ。

「僕はこれにしようかな」
「じゃあ、私はこれ!」

 見た目は草餅と普通のお餅の二種類。
 中身はつぶ餡、こし餡、みそ餡、白餡の四種類。
 どれにしようか迷っていたけど、タケルくんがどれにするか教えてくれた瞬間、私もどれにするか決まった。

「これください!」
「はいよー!」

 タケルくんが声をかけると、店のおじさんが選んだかしわ餅を愛想よく包んでくれる。
 自分の分は自分で払うって言ってるのに、僕が奢ると譲らないタケルくんと少し揉めていたら、何を勘違いしたのか、店のおじさんに「デートかい? 若い人たちは元気でいいねぇ」なんて笑われた。

「ちがっ……!」
「そうです。僕たちデート中なんです」

 おじさんの勘違いを正そうとした私を遮って、タケルくんが笑顔で嘘をつく。
 あまりにも自然に嘘をつくタケルくんの腕をつねると、痛いと小さく声をあげたあと「そういうことにしといたほうが色々聞かれなくて済むよ」とこっそり耳打ちされた。
 耳に当たるタケルくんの息の感触。
 火照った頬とうるさくなる心臓を落ち着かせているうちに、タケルくんは二人分のお会計を済ませて商品を受け取った。

「じゃ、いこうか」

 彼が歩き出すまで気づかなかったくらい自然に、私の手をタケルくんが握る。
 一拍おいて、戸惑いながらついていく私。
 背中側からおじさんの声が聞こえ、タケルくんは私と繋いでいる反対側の手を高く上げてひらひらと振った。



「もう、恥ずかしかったよ!」
「ごめん、ごめん」

 のんびりするのにちょうど良さそうな公園を見つけ、空いているベンチに並んで腰掛ける。
 ここまでずっと手を繋いできたせいで、すれ違う人達の視線が痛かった。
 でも、タケルくんは文句を言ってもどこ吹く風。
 全く悪びれない様子で謝りながら、ゴソゴソとビニール袋からかしわ餅を取り出した。

「はい、ヒカリちゃんの分」
「ありがとう」

 結局、代金は払わせてもらえなかったなと思いながら、大きな葉っぱに包まれた白いかしわ餅を受け取る。

「はい、タケルくん」
「あ、ちょっと待って」

 伸びるかしわ餅を無理やり割って、半分をタケルくんに渡すと、ちょっと遅れてタケルくんも草色のかしわ餅を割って、半分私に差し出した。

「ありがとう」
「こちらこそ」

 小さいときから一緒にいたせいか、いつの間にか食べ物や飲み物は違う種類を選んで分け合うのが私達の当たり前になっていた。
 私もタケルくんも他の人とはしないから、二人だけの特別。二人だけの常識。
 どっちから食べようかなと悩んで草餅に齧りつくと、白いかしわ餅に齧りついたタケルくんが、みょーんとお餅を伸ばしながらこちらを見た。

「こし餡で良かったの?」
「ん?」
「…………他にも味はあったのに、中身が僕と同じこし餡で良かったのかなって」

 ごくんと口の中にあったかしわ餅を飲み込んだタケルが私を見つめる。
 心の中を探るような視線から顔をそらし、私も口の中のかしわ餅を飲み込んだ。

「タケルくんと同じで、こし餡が一番好きだから」
「あれ? 僕がつぶ餡よりこし餡が好きだって言ったことあったっけ?」
「何年付き合ってると思うの」
「そっか。忘れてるだけで昔言ったことあったのかな」

 正確には、タケルくんが私にこし餡派だと言ったことはない。
 だけど、つぶ餡かこし餡か選べるときは、アンパンもおまんじゅうも必ずこし餡を選ぶ姿を見てれば、答えは簡単に導き出せる。

「ヒカリちゃんがこし餡が好きだなんて初めて知った」
「初めて言ったもん」

 ちょっと悔しそうなタケルくんにニヤリと笑うと、タケルくんもつられて吹き出す。そして、自分が選んだ草色のかしわ餅を一口で口の中に入れた。
 私は元々、どちらかというとつぶ餡のほうが小豆の香りがする気がして好きだった。
 だけど、タケルくんがこし餡派だって気づいてからは、彼がこし餡が好きな理由が知りたくて、選べるときはこし餡を選ぶようにした。
 今では、すっかりこし餡派。
 お兄ちゃんがつぶ餡が好きだから、どっちを買うかでたまに喧嘩になることもあるくらい、こし餡が好き。

「うん。ヒカリちゃんが選んだほうが美味しかったね」

 私がタケルくんに貰った草餅を食べてる間に、全部食べ終わったタケルくんが満足そうに天を見上げる。
 今日は気持ちいいくらいの晴天。
 新緑の隙間から漏れ注ぐ木漏れ日が美しい。

「そう? タケルくんが選んだほうが美味しかったと思うけど?」

 タケルくんの選んだ草餅は、蓬の香りがしてとても美味しかった。
 このあとに私が選んだ普通のかしわ餅を食べるのが、なんだか寂しいくらいに。

「そうかなぁ?」
「じゃあ、もう少し食べてみる?」

 半分のかしわ餅を更にもう半分に割って、タケルくんに差し出す。
 あーんと口を開けるので中にかしわ餅を入れてあげると、私の指をぺろりと舐めて離れていく。

「やっぱり、ヒカリちゃんの選んだほうが美味しいね!」
「……もう!」

 悔し紛れに、四分の一残ったかしわ餅を一口で食べて、自然を装ってタケルくんに舐められた指を舐める。
 なんとなく特別な味がする気がする。

「ね、ヒカリちゃんが選んだほうが美味しいでしょ?」

 全部お見通しと言わんばかりに余裕の微笑みを浮かべるタケルくんの顔が見れなくて、遠くの景色に目をやり頬を膨らませた。




 私達はまだ、仲のいい友達。
 お互いが唯一無二の特別な存在だって認識してるけど、このむず痒く頬が緩む関係から抜け出すきっかけを掴めないでいる。
 いつかは必ず一歩を踏み出さなきゃいけないんだろうけど、今はもう少しこのままでいたい。



 タケルくんがつぶ餡派になったら、私もつぶ餡派になるくらいあなたのことが好きだから、もう少しだけ友達の時間を楽しませて、ね?




cup バレンタインチョコレート

2019.03.23 Sat

「高石クン〜」

 甘ったるい声。
 こんな声を聞くのは今日何度目だろう。

「何?」

 呆れてため息をつきたい気分だなんて悟られないようにニッコリ笑って振り返ると、頬を赤く染めた女の子がキラキラした包装を差し出した。

「これ! バレンタインのチョコレート! 受け取って!」

 ――やっぱりね。喉まで出かかった言葉を飲み込んで、心にも無いお礼を言うと彼女の頬がいっそう赤く染まる。
 これはまずいと踵を返した瞬間に呼び止められて、思わず舌打ちをしそうになった自分を堪え、引きつった笑いで断りの文句を考えていると別の女の子から呼ばれたから、これ幸いにと逃げ出した。


 今日は何度こんなことを繰り返したか。
 少しでも一人になればすぐに声をかけられるから、安心してトイレに行くことすら出来ない。友達と話してたってお構いなしに呼ばれるし、笑顔が引きつりすぎて今日一日で筋肉痛だ。
 あ……さっきの子も手作りか。
 手作りは何が入ってるかわからないから、申し訳ないけど全部捨てている。
 昔は捨てるなんて可哀想な気がしてたけど、兄貴が食中毒で入院してから考えを大きく改めた。
 大切なのは情より健康。
 ミミさんの独創的なチョコレート封じの目的もあり、兄貴の入院後は仲間内でもバレンタインは購入したものが暗黙の了解になっている。
 食べ物を捨てるという罪悪感を毎年味あわされて、ホワイトデーには大量のお返しが必要になる。
 うっかり食べれば入院生活。
 こんな地獄のイベント、一体誰が考えついたのか。

「高石君ー!」

 また甘ったるい声で呼ばれて、バレないように一つため息をついた。



 今年は大きな紙袋三つ。
 手作りが流行りのようで、嵩張らないけど中身はほとんどゴミ箱行き。
 学校から離れて、ようやく女の子に声をかけられることもなくなった。
 家に着くまでは油断できないけど、大きなため息をついて一日の疲れを吐き出した直後、よく知っている声が聞こえて背筋がピンと伸びた。

「タケルくん……!」
「な、なに?」

 緊張して振り返った先には、予想通りヒカリちゃんの姿。
 毎年チョコレートを用意してくれるから、無い訳はないと思ってたけど、いつもはクラスメートに混じって気軽な様子でチョコレートをくれるのに、今年はどれだけ待ってもくれなくてモヤモヤしてた。
 ずっと待っていたヒカリちゃんからのチョコレート。いざその時が来たら緊張してしまう。
 緊張してることがバレないように、ぎゅっと持っている紙袋を握りしめる。
 紙袋いっぱいのチョコレートより、ヒカリちゃんのチョコレートのほうが嬉しい。
 その一つを心待ちにしてた。

「タケルくん……あの、コレ……」

 おずおずと差し出された小さな箱。素人仕事のラッピング。
 ひと目でわかる、手作りだ!

「手作り、やっぱり嫌かな……?」

 視線を逸らしたまま告げられる小さな言葉に返事を返すこともできず、差し出された箱を凝視してしまう。
 やっぱり嫌だよね……と落ち込んだ声で箱をしまおうとするので、思わず手を掴んだ。
 かち合う視線。赤く染まった頬。
 顔が熱い。

「あっ……」

 ヒカリちゃんの手のひらから小箱が落ちて、アスファルトにことりと小さな音を立てる。
 慌てて拾おうと伸ばした手が重なった。

「ご、ごめんっ!」
「こちらこそ…!」

 すぐに手を引いたヒカリちゃんの代わりに小箱を拾い上げる。
 ちょっと砂はついちゃったけど、箱が大きく凹んだりしてなくて良かった。

「開けてもいい?」
「うん……」

 赤いリボンを引っ張ると、ふわふわ箱を覆っていた素材の名前はわかんない布が開く。
 ゆっくり箱を開けると、中には明らかに手作りとわかる不格好なトリュフが並んでいた。

「ご、ごめん! 下手だし、やっぱり買ってきたやつのほうがいいよね! 買ったのも用意してるから!」

 僕からチョコレートを取り戻そうとするヒカリちゃんをひょいっと躱し、一つを口の中に放り込む。
 不格好な見た目からは想像できない、なめらかな甘さが口の中いっぱいに広がった。

「美味しい! ありがとう、ヒカリちゃん」
「……う、うん」

 顔を真っ赤に染めたヒカリちゃんが、俯きながら頷く。


――好きだ。


 思った瞬間、抱きしめていた。

「え?」
 腕のなかで戸惑うヒカリちゃんを逃さないよう力を込める。
 ヒカリちゃんはキョロキョロと視線をさまよわせたあと、そっと僕の胸に顔を埋めた。

「……お腹、大丈夫?」
「え?」
「前にヤマトさんが手作りチョコレート食べて食中毒で入院してたから……」
「あぁ……」

 あのときのあれは一体何が入っていたんだろう。
 デジタルワールドから戻った年のバレンタインで、食べ物は大切にしなくてはいけないと思って食べらしいけど、シェフでもないよく知らない人の手作りは駄目だと全員が実感した瞬間だった。
(よく知っててもミミさんの手作りもどうかと思うけど)

「大丈夫。ヒカリちゃんの作ってくれたもので入院するわけがない」
「そうかな?」
「うん」

 ヒカリちゃんが嬉しそうに僕の胸に頬を擦り寄せる。
 どくんと心臓が大きく鳴る。
 ――このまま終わりには出来ない。もう一歩を踏み出すための勇気がほしい。

「どうして、手作りのチョコレートを用意してくれたの?」

 意地悪な質問だ。
 あわよくばヒカリちゃんから言わせようとしている。

 ……沈黙が長い。

 沈黙が続けば続くほど卑怯な自分をヒカリちゃんが好きなわけはないじゃないかと思えてくる。
 かといって抱きしめた腕を開放するわけにもいかず、不安な気持ちでヒカリちゃんの返事を待った。

「……作りたかった、じゃダメ?」

 小首を傾げた上目遣いに僕の理性が崩壊する。気がついたら、ヒカリちゃんの頬に手を添え顔を近づけていた。
 ふっとヒカリちゃんの息が触れた瞬間、我に返る。
 真っ赤な顔でぎゅっと目を閉じ、唇を固く引き結んでいるヒカリちゃん。
 ――そうだ。こんなの順番がおかしい。
 ヒカリちゃんの前では、卑怯な自分に打ち勝ちたい。
 唇にしようとしていたキスを無理やり軌道修正して頬に変える。
 不思議そうに目を開いたヒカリちゃんのおでこにもキスをして、もう一度抱きしめた。

「好きだ」

 もっと色々考えていたはずなのに、出てきたのはとてもシンプルな告白。
 見上げるヒカリちゃんの目が大きく開き、僕の胸に顔を埋めてすんと鼻を鳴らした。

「私も」

 小さな返事。
 その想いを伝えるために、ヒカリちゃんはどれだけの勇気を振り絞ってくれたのだろう。
 抱きしめながら、もう一つトリュフを口に入れる。

「ヒカリちゃんのチョコレート、美味しいよ」

 ふわりと笑ったヒカリちゃんに、今度こそ唇を重ねた。



 ファーストキスは甘いチョコレート味。
 最高のバレンタインチョコレート。




cup 通販のご案内

2019.03.03 Sun

デジコレ8にて頒布した新刊の通販をBOOTHにて始めました!

「MIRRORWORLD」

「かいすうけんじゅういちまい!」


イベント残部の通販となります。再販予定はありません。
どちらも(特にR本)残りわずかとなっておりますので、ご検討されている方は早めのお求めをお願い致します。



完売致しました。
お手に取っていただきました方々、誠にありがとうございました。


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